株式投資で倒産企業を避ける7つのチェック項目~会社四季報で見るべきポイントとは~

株式投資で銘柄選定をするときには企業の公表している情報から業績や様々な指標を確認するのが基本です。その結果として期待できる銘柄に投資をしようと思うかもしれませんが、その時点で「買い」の判断をするのではまだ十分な情報に基づいているとは言えません。

魅力的な企業であっても、倒産するリスクがないわけではないでしょう。倒産してしまっては元も子もないので、投資を決めるときには危険性に関する情報を得ることも大切です。

この記事では会社四季報を通して倒産企業を避けるための対策を立てる方法を紹介します。企業の倒産危険性をチェックするためのポイントを理解しておきましょう。

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株式投資に役立つ会社四季報とは

会社四季報とは、東洋経済新報社によって発行されている日本の上場企業に関する情報誌です。

四季という名称から想像できるように、季節ごとに年4回の頻度で発行されています。オンラインでも閲覧可能で、気軽に情報を取得できるようになっています。

会社四季報には、株式投資をする上で役に立つ情報が詰まっています。読むと何がわかるのか、どんな内容が盛り込まれているのかを確認しておきましょう

会社四季報からわかること

会社四季報からわかるのは、個々の上場企業への投資判断をする上で欠かせない基礎的な情報です。

企業の基本情報として事業内容や株主情報などが簡潔にまとめられているだけでなく、業績や財務に関わる内容も盛り込まれています。 さらに数期にわたる業績推移が記載されていて、2決算期先までの独自予想も見ることができます。

全ての上場企業の銘柄情報が載っているため、有名企業でも上場したばかりの企業でも詳細な情報を広く取得可能です。投資先を幅広く知る上でも重要な情報源になります。

会社四季報に掲載されている内容

会社四季報に掲載されているのは、具体的には以下の内容です。

①証券コード 株式を上場している企業につけられている4桁の数字
②解説記事 事業内容・事業部門ごとの売上高に対する構成比率、業績の見通し、新製品・新技術・設備投資などの株価材料
③株主、役員、連結子会社 主な株主や役員、連結対象となっている関連グループ会社の情報
④財務指標 総資産・自己資本・自己資本比率・資本金
⑤株価や株価指標 過去の資本異動および株価の高値・安値、過去(約3年間)の株価チャート
⑥業績の推移 数期にわたる売上高や1株当たりの利益、配当などの業績

このように、投資判断をする上で重要な基礎情報から業績に関わる内容まで幅広く掲載されているのが会社四季報です。これらの情報に基づいて企業の状況をチェックすれば、魅力的かつ倒産リスクが低い企業の銘柄を選定することが可能となります。

株式投資で倒産企業を避ける7つのチェック項目

株式投資で四季報を代表とする情報源を活用し、倒産企業を避けるためには何をチェックしたら良いのでしょうか。

ここでは7つの重要なチェックポイントを挙げて詳細を解説します。

チェックポイント①自己資本比率が低くないか

まず1つめのチェックポイントは、投資先候補として考えた企業の「自己資本比率」が低くないかどうかです。

自己資本比率とは

自己資本比率は、企業の総資産のうちで自己資本がどの程度の割合を占めているかを示す指標です

この自己資本比率は、どのくらいであれば倒産するようなリスクが低いと考えられるのでしょうか。

自己資本比率の計算式

自己資本比率は「総資本に占める自己資本の割合」です。総資本には「自己資本」と「他人資本」があるので、この定義に従うと自己資本比率は以下のようにして計算されます。

自己資本÷資産(他人資本+自己資本)×100

自己資本は財務諸表の「貸借対照表」から求めることが可能です。純資産の部を参照し、「株主資本」と「その他の包括利益累計額」の合計を取ると自己資本です。

自己資本比率の目安

自己資本比率は、企業の安全性や安定性の高さの指標として用いられています。 計算式からわかるように、自己資本比率は%で示される指標で、割合が大きいほど安全性が高いと判断することができます。

一般的な目安としては以下のとおりです。

  • 80%以上:優良
  • 50%以上:合格
  • 20%以下:倒産リスクが高い

20%~50%の場合にはすぐには倒産しないかもしれませんが、経営が安定していて安全だとは言い難いと考えるのが妥当です。

チェックポイント②有利子負債を多く抱えていないか

2つめのチェックポイントは「有利子負債」の多さです。

有利子負債とは

有利子負債とは、貸借対照表の負債項目の中で利子の支払いが発生するもののことです。
借入金や社債がこれにあたります。

負債を抱えること自体は資金調達の結果なので問題はありませんが、あまりにも有利子負債が多いときには倒産リスクがあると考えざるを得ません。 有利子負債を見るときの着眼点をおさえておきましょう。

有利子負債は少ないほど良い

結論的には、有利子負債は少ないほど良く、反対に多いほど倒産リスクが高いと言えます。

有利子負債があると、利子によって返済負担が常に増大していきます。金利には違いがありますが、基本的には負債額が大きければその分だけ利子の支払いも大きくなるので、有利子負債が多い場合にはいずれ返済できなくなる可能性も考えられます。

そのため、多額の有利子負債を抱えている企業は少額しかない企業に比べると倒産するリスクが高いのです。多少は有利子負債があるのが通常なので少額であれば問題はありませんが、多いときには投資先候補としては懸念する必要があります。

キャッシュからわかるリスクの大きさ

有利子負債が多いのはあくまでリスクファクターであって、必ずしも倒産するわけではありません。多額の有利子負債を抱えていたとしても、資金繰りで苦労しないケースもあるからです。

有利子負債が問題になるのは、返済に伴って継続的にキャッシュ(現金)が減ってしまうためです。もしキャッシュもしくは現金同等物が十分にあるなら、返済不能に陥る可能性は低いと考えられるでしょう。

現金同等物とは

現金・要求払預金(当座預金や普通預金など)や、低リスクかつ換金が容易な短期投資(定期預金など)を合計した金額です。キャッシュ・フロー計算書における「現金及び現金同等物の期末残高」の金額を指します。

反対に、キャッシュがなく速やかに現金化できる資産も持ち合わせていない場合には、倒産リスクが高いと判断せざるを得ません。

このように、有利子負債はキャッシュと合わせて考えることで倒産するリスクの高さをより正しく評価できます。投資先として選びたい魅力的な企業が見つかったときほど、両方をチェックして客観的な評価をするのが大切です。

単年だけで判断しないこと

さらに有利子負債と倒産リスクについては、単年だけで判断しないのも重要です。

有利子負債を持つのは、資金調達をして設備投資などに費やすのを目的としているケースが多くなっています。

  • 先行投資をして新規事業を始めるとき
  • 主要製品の生産量を増やすために工場を建設するとき

こういったケースでは、資金が十分に必要です。銀行融資などで資金調達をすれば有利子負債が発生しますが、それによって今後の利益向上を見込めるでしょう。 そのため、短期的に有利子負債が発生する分には良い場合もあり、企業成長を遂げる上で不可避と考えられることがよくあります。

過去の会社四季報を用いて有利子負債の状況を確認し、有利子負債が一時的に増えていても、その後にキャッシュフローとの差額(倍率)が小さくなっているようであれば優良な投資をしたと判断できるでしょう。

一方、有利子負債とキャッシュフローの差(倍率)が大きくなっているようであれば注意が必要です。長期間にわたって有利子負債が多い場合には、財務体質が不安な状況に陥っています。

このような視点で見て有利子負債の本質を見抜くと、倒産リスクが高いのか成長しようとしている段階なのかがわかります。なお、過去の会社四季報はオンラインで閲覧することが可能です。

チェックポイント③営業キャッシュフローはプラスか

3つめに重要なチェックポイントは「営業キャッシュフロー」の状況です。

営業キャッシュフローとは

営業キャッシュフローは、企業が主力とする事業活動を通して生み出したキャッシュを指します。
「営業CF」と略されることもあります。

この営業キャッシュフローは、基本的に「プラスであるかどうか」をチェックする必要があります。

キャッシュを獲得できる企業は経営面・業績面ともに順調

営業キャッシュフローがプラスというのは、キャッシュを獲得できていることを意味します。事業に伴う利益によってキャッシュを生み出している、つまり事業を成功の方向に進められているということです。

営業キャッシュフローが増えているなら、様々な局面で使用可能な現金資金を増やしているという点で安全だと考えられます。それだけ経営がうまくできている企業だという証ですから、長期的にも好調な業績を出し続けると期待できるでしょう。その現金資金を使って投資をすることも、有利子負債の返済も可能です。

一方、営業キャッシュフローがマイナスになっている際には、キャッシュが減少していることを意味します。企業としては利益獲得の目的で投資をするのが困難で、状況によっては融資などによるキャッシュの調達が必要とされる状況です。

特にマイナスの状況が長く続いている場合には、業績だけでなく経営面にも問題がある可能性が高いので注意しなければなりません。

マイナスを避けられないケースもある

営業キャッシュフローはプラスが続いているのが好ましいのは事実ですが、マイナスを避けられない局面もあり得ます。大きな調達をして長期的に加工販売をしようと計画した際などには、一時的にキャッシュが減ることがあるからです。

このような傾向があるかどうかは、業種による違いもあります。素材や化学、鉄鋼などの分野のように景気や資源価格による影響を受けやすい業種では、不況や資源価格の高騰によって営業キャッシュフローのマイナスを回避できない場合もあります

営業キャッシュフローが何期も連続してマイナスになっている場合には、長期的な経営不振などを懸念せざるを得ません。しかし、1期だけマイナスになったという程度であれば、一時的な結果という可能性があるので他の要因を加味して検討するのが大切です。外的要因による一時的なマイナスであれば、倒産するリスクはあまりないと考えられるからです。

チェックポイント④累積損失を出していないか

4つめのチェックポイントとして挙げられるのは、累積損失が出ているかどうかです。

累積損失とは

累積損失とは、これまで会社に積み上げられてきた損失金を指します。
「累損」と省略されることもあります。

続いては、累積損失の見方と有無の判断の仕方を理解しておきましょう。

累積損失の見方

帳簿上、累積損失は「貸借対照表」の純資産の部に計上されます。見方を知っていれば、企業の累積損失の状況を判断するのは簡単です。

貸借対照表の純資産の部で「利益余剰金」のマイナス表示を確認すれば、累積損失がわかります。利益余剰金が「▲」の表示になっているのがマイナスを意味していて、累積損失があると理解できます。

企業の業績が低迷して赤字になったとしても、多額の利益余剰金があれば経営を継続し、打開できるような余力があると判断できます。

一方、利益余剰金が▲表示になっていて累積損失がある場合は、過去のトータルの損益がマイナスということです。この状況が続くようであれば、企業が倒産するリスクがあると考えざるを得ません。

ただ、利益余剰金がプラスかマイナスかを見るだけでは正確に判断しきれません。経営を進める上で必要な金額も生み出せる営業利益も、企業規模によって異なるからです。

目安として「企業の総資産の30%以上」の利益余剰金があれば業績優良と考えるのが良いでしょう。総資産についても、四季報の財務欄に掲載されています。

黒字なのに累積損失が出ることもある

累積損失は黒字経営なら出ないのではないかと考えがちですが、累積損失は「過去から現在に至るまでの損益の合計」ですから、現在は黒字でも累積損失がマイナスになっていることはあり得ます。

目の前の業績だけを見て「大きな営業利益を生み出している=優良企業」だと考えず、累積損失があるためにリスクがあることも懸念する必要があります。現状の黒字は一時的なものであって、業績的に大きな波がある企業の可能性もあるからです。ずっと損失を抱えてきたために負債が大きく、一時的な業績不振でも返済ができなくなって倒産に向かうリスクもあります。

金融機関から融資を受ける際にも累積損失があると評価が低くなりがちで、世界的な経済の低迷や業界の需要の低下などが見られた際には資金調達がうまくいかず倒産してしまう可能性もあります。

そのため、安全性を重視するなら累積損失のある企業は避けるべき投資先と認識しておいたほうが無難でしょう。

チェックポイント⑤債務超過に陥っていないか

五つ目のチェックポイントとしては債務超過の有無が挙げられます。

債務超過は赤字とは違い、自己資本が「▲」の表示になっている状況を示すものです。債務超過の状況になっていると何が問題なのかを確認しておきましょう。

赤字と債務超過のちがい

債務超過は企業が持っている資産に比べて負債が大きいことを示しています。資産を全て現金に換えたときに負債を全て返すことができない危険な状況では、いつ倒産するかもわかりません。資産的に潤沢とは言えず、倒産した際にも投資家に資産を分配できるほどの余力がないことがわかります。

一方、赤字は債務超過とは違って対象としている期間における企業の業績がマイナスになっていることを指します。単年度での収入と支出の差を取ったときに、プラスなら黒字、マイナスなら赤字ということになります。あくまで対象としている年度で収支がマイナスになっただけなので、一時的なものだという可能性があります。

債務超過は赤字と違って、負債によって長期的な収支のマイナスが続いてきた可能性が高いことがわかる状況です。すぐに打開して、健全な財務状況に復帰できると期待するのは難しいでしょう。

新型コロナ禍で注意すべき上場廃止の可能性

債務超過が長期化し、1年以内に解消できなかった場合には「上場廃止」になる仕組みがあります。

それが倒産に直結するというわけではありませんが、株式の自由な売買ができなくなってしまうことによって株価の低下や株式の流動性の低下が起こることは否めません。

最近は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、債務超過がある企業が増加しつつあります。上場廃止から倒産へ、という流れになるリスクを考慮して、投資先としては回避しておくのが無難でしょう。

日本経済新聞の発表によれば、2020年9月末時点で債務超過をしている企業は20社と東日本大震災の被害があった直後の2011年9月以来の多さとなっています。中でも飲食サービス業や観光関連産業など、コロナ禍で甚大な打撃を受けた業界は注意が必要と言えそうです。

チェックポイント⑥何年も赤字が続いていないか

6つめのチェックポイントは、赤字の状況です。 倒産リスクのある企業かどうかを見極めようと考えていなかった人でも、黒字か赤字かは見ている場合が多いでしょう。

倒産リスクを考える上で重要なのは「何年にもわたって赤字が続いていないかどうか」をチェックすることです。

経営上、赤字になることは十分にあり得るので、単年であればあまり気にする必要はありません。社会情勢の変化によって一時的に赤字が生じたり、新規事業の開始に伴う人材調達や研究開発の推進、マーケティング施策の実施などの影響で支出が増加しているケースもあります。

一方、継続的な赤字は純資産が減少することに直結するため、財政難につながるリスクが高いことを示します。3年も赤字が続いているような場合には倒産リスクが高まっていると考えるのが妥当でしょう。 単年だけでなく、過去にさかのぼって財政状態が十分と言える状況かを見極めるのが大切です。

チェックポイント⑦継続企業の前提に関する重要事象に記載がないか

7つめのチェックポイントは「継続企業の前提に関する重要事象」の記載です。あるいは「継続企業の疑義注記」という記載の場合もあります。

これらの記述があるときには、事業を継続できる状況にあるかどうかが疑われる事象が何かあったことを意味しています。つまり、記載がない企業に比べると倒産リスクが高いということです。

この記載のチェックについて、詳しく理解しておきましょう。

事業継続に影響を与える原因

事業継続に悪影響が大きく、倒産リスクを念頭に置く方が良い要因として知られているのが以下の3つです。いずれも上述のチェックポイントに該当しています。

  • 債務超過の状態にある
  • 損益計算書において赤字が何期も連続している
  • キャッシュ・フロー計算書において営業キャッシュ・フローのマイナスが何期も連続している

会社四季報の会社概要に「継続事業の前提に関する重要事象」の記載があるときは、これらの問題が認められたと考えられます。

経営破綻が起こって破産するリスクがある状況になると、企業は会計処理の仕方を変更せざるを得ません。減価償却など、事業継続するのを前提に計上している経費などがあるからです。

経営が破綻した企業では倒産を前提とした決算書を作成しますが、改善の方向に向かっていると考えている企業では事業が継続するのを前提として決算書を整えます。 この視点を持って企業の事業継続性を評価することが重要です。

危険度で分けられる2つのパターン

倒産の危険度を見る上では、2つのパターンがあることを念頭に置くのが肝心です。

まず1つは、経営破綻の回避について確実性があるパターンです。企業が適切な方法で努力を続ければ経営が回復する可能性が十分にある場合には「リスク情報」として決算短信または有価証券報告書に記載されます。

もう1つは、確実性が高いリスク回避策を講じるのが難しいパターンです。企業がいかに努力をしたとしても経営破綻に向かう可能性が高い場合には「継続企業の前提に関する注記」が財務諸表の後に記載されます。

継続企業の前提に関する注記が財務諸表の後に記載されているのは、より危険度が高い状況です。倒産リスクがかなり高まっていると考えざるを得ないでしょう。

企業倒産の不安が少ない企業とは

投資先企業に倒産されてしまうと、投資による損失が甚大になります。倒産リスクが低い企業を選び出すのは、コロナ禍で社会不安が続く昨今では欠かせないことです。

倒産リスクを避けるためには、以下のような条件のもとで企業を選ぶと安心して投資できるでしょう。

自己資本比率が80%以上
有利子負債がゼロ
過去5年間にわたって毎期安定した利益を計上している

さらに配当金も安定して出しているのであれば、利益を確実に生み出している企業と考えられます。

とはいえ、今の時代は何が起こるかわかりません。万が一倒産したときのために分散投資も考慮して、投資の方針を立てるのが適切です。

まとめ

投資先としてどれほど魅力が大きい企業だったとしても、倒産してしまっては元も子もありません。事業を継続できずに倒産するリスクがきわめて低い企業を選定することは、株式投資をする上での前提条件としましょう。

倒産リスクが低い企業を見極めるには、会社四季報を活用して企業の事業継続性を評価する習慣を作るのが大切です。ここで挙げた7つのチェックポイントは基本的なもので、業種や事業内容によって一対一の関係でリスクが高いと言えるわけではありませんが、必ず確認してから投資判断をするようにしましょう。 

この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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