テーマ株が儲からない理由とは?投資するならチェックすべき7つのポイント
この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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最近、「国民所得倍増プラン」「成長と分配の好循環」「新しい資本主義」「貯蓄から投資へ」「一億総株主」……こんな言葉をニュースでよく耳にするようになりました。

そのような社会の風潮の中で、投資が注目を集めています。
 
さて、株式投資の世界では「テーマ株」と呼ばれているカテゴリーの銘柄があり、個人投資家が手を出しがちな株として知られています。
 
しかし、株式投資のプロの視点では、「テーマ株は儲からないもの」と言われています。 そんな「テーマ株」とはどんなものなのでしょうか?
 
そこで今回は、「テーマ株」についてその特徴や儲からない理由などを解説していきます。そして「テーマ株」に振り回されないで儲かる投資をしていくために、チェックすべき情報源とそのチェックポイントについて解説していきます。

【結論】テーマ株は儲からない!その理由とは?

まず、結論から言えば、(特に投資を始めたばかりの)個人投資家は「テーマ株」と呼ばれるカテゴリーの株はおすすめしません。大きな失敗を避けたいならば、手を出してはいけません。
 
そもそも「テーマ株」とはどういうものなのか?そして「テーマ株」がどのような性質を持っているのか、以下で説明していきます。

テーマ株ってなに?

「テーマ株」とは、その時々の株式市場において注目を集めているテーマに関連した企業のことです。「材料株」とも呼ばれます。
 
例えば「セラミックス」や「カーボンナノチューブ」といった新素材関連のテーマ株や、
「AI」「自動運転」といった新技術関連のものが注目されたりします。

世界的イベントに関するテーマ株も
「オリンピック」や「万博」といった大規模なイベント時に注目される企業や、地震や水害などの自然災害や、戦争やパンデミックといった厄災の発生時に、それによって業績の改善が期待できる企業(例えば建設土木業や製薬会社など)もまた、テーマ株のひとつです。

こういったテーマ株は短期的には株価が大きく上昇することが多く、個人投資家の多くは、簡単に利益が狙えそうに思えるからか、テーマ株に積極的に投資する傾向があります。

テーマ株が儲からない理由

それではなぜ、そのようなテーマ株は儲からないし、手を出すべきではないのでしょうか。
 
それは、テーマ株の多くは、土台となる業績とは無関係に「将来の業績が大きく改善するだろう」という「投資家の期待感」により株価が大きく反応しているからです。
 
言い換えれば、この株価の反応は、土台となる業績の裏付けが存在しないものです。投資家からの将来の業績変化という期待が萎えてしまえば、短期間で大きく上昇した株価も、急速に下落してしまいます。

短期間の株価下落例
例えば過去には、北海道で大地震が発生したのち、北海道が地盤のある注文住宅会社の株価が大きく上昇しましたが、すぐに上昇前の水準まで下落してしまいました。

また、電子メディア事業を展開するある企業が、スマホ向けゲームのヒットが期待されて株価が急上昇したものの、業績が伴わないものだったために、上昇前より低い水準まで急落しました。

つまり、テーマ株は、短期的に上昇していても買った途端に急落する可能性もあり、利益を出すどころか、損をする可能性が高いものと言えます。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

ごく少数ではありますが、テーマ株の中にも業績の裏付けがあるものもあり、投資に適しているものもあります。

そう言った銘柄情報をお探しでしたら、弊社、ウェルスパス投資顧問をご利用ください。

テーマ株に振り回されないためには

それでは、個人投資家がテーマ株に振り回されないようにするためには、どうしたら良いのでしょうか。
 
上でも述べたように、テーマ株の問題点は「土台となる業績と無関係な期待感」です。逆に言えば、企業の業績の実態を正しく把握することが、何より重要なのです。
 
そして、個人投資家が投資を検討すべきカテゴリーは、「テーマ株」ではなく別のカテゴリーであり、それは「成長株」「割安株」「復活株」と呼ばれるものです。
 
これらのカテゴリーは「テーマ株」ほどの派手さはないかもしれません。しかし、約3800社(2022年8月時点)ある上場企業の中から、儲かるためにはどの企業の株に投資するかを決める大事な視点であると言えます。

儲かる株を見つけるために注目すべき3つのカテゴリー

上でも述べたように、儲かる株を見つけるために注目すべきカテゴリーとして、「成長株」「割安株」「復活株」の3つが挙げられます。
 
ここではこれらについて解説するとともに、儲かる株を見つけるための重要な情報源「決算書」について述べていきます。

成長株

「成長株」とは、売上や利益が年々増加していて、今後もさらに増加が見込まれる企業の株のことです。別名「グロース株」とも呼ばれます。

株価とは企業の価値です。売上や利益を年々増やしている企業は、将来企業価値が高まっていくことが期待できます。そしてそのような企業の株を、投資家は欲しがり、株価はさらに上昇していきます。
 
成長していく途上でそのような株に投資しておけば、儲けることができるというわけです。

割安株

「割安株」とは、企業価値と比較したときに、株価が割安になっている企業の株のことです。別名「バリュー株」とも呼ばれます。
 
株式市場全体が低迷していると、業績の良い会社の株まで売られて、株価が下がることがあります。その結果として、株価が本来の企業価値よりも割安な状態になってしまいます。


このような株は、いずれは正当な評価のレベルまで株価が戻る可能性が高いため、株価が低迷しているうちに買っておけば、儲けることができるというわけです。

復活株

「復活株」とは、最悪な業績状態から、一転して黒字転換や利益の伸長といった状態に遷移する企業の株のことです。
 
このような企業の株価は、徹底的に安値まで売られた水準からの上昇となりますので、上昇率は非常に高いものになります。
 
復活株をうまく見つけることができれば、大きな成果を得ることができるというわけです。

儲かる株は決算書で見つけよう!

このような儲かる株の銘柄を見つけるための情報が掲載されているものがあります。それが「決算書」です。
 
決算書の主な情報源として挙げられるのが、「決算短信」「有価証券報告書」の2つです。
より確実に儲かる投資をしたいならば、これらすべてチェックするべきですが、個人投資家は、「会社四季報」をチェックすれば十分です。

「会社四季報」でチェックするべき7つのポイント

では、「会社四季報」とはいったいどのようなものなのでしょうか。
 
「会社四季報」とは、上場企業についての過去数年間の業績数値、将来の業績予想、財政状態だけでなく、企業の概要や最近の事業の状況、株主の状況、過去の株価推移、株価チャートなどがコンパクトにまとめられた書籍です。毎年3、6、9、12月の中旬ごろに発行されています。
 
そして、上で述べた「成長株」「割安株」「復活株」を見つけるために、つまり儲ける投資をするために、「会社四季報」でチェックするべきポイントが7つあります。ここではそれについて見ていきます。

売上高・経常利益

「会社四季報」には「業績」欄と呼ばれる欄があります。ここには、過去3〜5期分の業績(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益)が記されています。
 
これら複数の項目の中からまずは「売上高」と「経常利益」をチェックしましょう。
 
まず、過去3年程度の「売上高」と「経常利益」の推移を見ます。これが毎年増加傾向にある企業は、「成長株」として投資する銘柄の候補となります。
 
しかし、過去3年程度の推移だけでは、たまたまこの3年ほど調子がよかっただけの企業(つまり「成長株」とは言えない企業)も混ざってしまう可能性があります。
 
そこで、慎重を期すならば、過去の「会社四季報」も手元に用意して、過去10年間の「売上高」と「経常利益」の推移もみましょう。

スピードが鈍化しているケースも
なお、毎年増加傾向にあるとはいっても、その増加スピードが以前に比べて鈍化しているケースもあります。こういった銘柄は、業績の伸びの鈍化に投資家が失望し売ってしまい、株価が低迷することがよくあります。「成長株」ではないとみなす方が安全です。

また、「売上高」と「経常利益」の推移からは、「成長株」だけでなく「復活株」として投資する銘柄の候補を探し出すこともできます。
 
「経常利益」がマイナス、すなわち赤字が続いていてもその赤字額が縮小している企業や、前期までは赤字だったものの黒字に転じている企業などは、「復活株」の可能性があります。

業績予想

「会社四季報」の「業績」欄には、過去の業績(売上高、営業利益、経常利益、当期純利益)だけでなく、当期および来期という2期分の業績予想の数値も掲載されています。
 
「成長株」や「復活株」の銘柄の候補を見つけるためには、この業績予想もチェックするべきポイントです。
 
この業績予想が、「会社四季報」の前号と今号を比較して大幅に上方修正されている企業は、「成長株」である可能性が高いと言えます。また業績の確定値が予想値よりも上回ったか下回ったどうかも、判断材料となります。
 
逆に、過去の「売上高」や「経常利益」は順調に増加していても、業績予想が示す「売上高」や「経常利益」が減っているようなことがあれば、「成長株」候補から外す方が賢明です。
 
「復活株」を探す際にも、業績予想は重要な指標になります。過去は赤字続きであっても、業績予想で赤字額の縮小や黒字への転換が示されていれば、「復活株」の可能性があります。
ただし赤字続きの企業の場合は、たとえ当期以降の業績予想が回復を見込んでいたとしてもその通りにならない可能性があり、「復活株」かどうか見誤りがちです。
 
これを回避するための有効な方法としては、「株価が下降トレンドである間は買わない」というものがあります。一般的に、株価は企業の実際の業績よりも早く底打ちするため、業績の回復予想が本物であれば、株価が先に反応して上昇を始めている可能性が高いからです。
 
ともあれ、業績予想はあくまで「予想」にすぎないことは念頭におきましょう。

特に、輸出や輸入の割合の高い企業(電機、自動車、食品など)や資源関連の企業(石油、石炭、金属、商社など)のように、為替相場や商品市況によって利益が大きく変動するタイプの企業の場合、業績予想は参考程度に見ておく方が安全です。

欄外記載の「前号からの業績予想の変化」

上でも少し述べましたが、業績予想が前号と今号を比較した時に上方修正されたか下方修正されたかも、儲かる株かどうかを見極める重要な情報になります。
 
これを簡単にチェックすることができるのが、各銘柄の欄外に記載された「前号からの業績予想の変化」です。
 
なお、記載内容とその意味は次のようになっています。

  • 前号並み:営業利益の増減が前号と比べて5%未満
  • 前号比増額:営業利益が前号と比べて5%以上30%未満増額、またはゼロから黒字へ
  • 大幅増額:営業利益が前号と比べて30%以上増額
  • 前号比減額:営業利益が前号と比べて5%以上30%未満減額、またはゼロから赤字へ
  • 大幅減額:営業利益が前号と比べて30%以上減額

株価指標

「会社四季報」の「株価指標」欄には、株価の割安度を測る指標がいくつか掲載されています(一部は「業績」欄に掲載)。これをチェックすることで、「割安株」として投資する銘柄の候補を見つけ出すことができます。
 
いくつか掲載されている株価指標のうち特に注目するべきは「PER」「PBR」「配当利回り」です。
 
ただし「会社四季報」に掲載されている株価指標は、「会社四季報」発売の3週間ほど前の株価を元にして算出されたものです。より確実な情報が欲しい場合には、計算式と現時点での株価に基づいて、最新の指標値を自分で計算して出しましょう。

PER

「PER」とは、Price Earnings Ratioの略であり「株価収益率」のことです。株価が1株あたり(予想)当期純利益の何倍まで買われているかを表す指標です(単位は「倍」)。この値が低いほど株価が割安であると判断されます。
 
計算式は次の通りです。

PERの計算式
PER=株価÷1株あたり(予想)当期純利益

PBR

「PBR」とは、Price Book-value Ratioの略であり「株価純資産倍率」のことです。株価が1株あたり純資産の何倍の水準かを表す指標です(単位は「倍」)。この値が1倍を割り込むと株価は割安と判断されます。
 
計算式は次の通りです。

PBRの計算式
PBR=株価÷1株あたり純資産

配当利回り

「配当利回り」とは、配当金により年利何パーセントの利回りになるかを表す指標です(単位は「%」)。この値が高いほど株価は割安と判断されます。

計算式は次の通りです。

配当利回りの計算式
配当利回り=1株あたり(予想)配当金÷株価×100

財務状況

業績や株価指標に基づいて「成長株」や「割安株」「復活株」を探し出せたとしても、その銘柄が倒産してしまえば、元も子もありません。特に「復活株」は倒産と紙一重のものでもあります。企業の倒産の危険が高いかどうかの確認は、株で儲けるためには必須事項です。
 
そこでチェックするべきなのが「財務状況」欄です。チェックポイントは以下の7つになります。これらの事象に当てはまる数が多いほど、倒産リスクは高いと判断できます。

  1. 自己資本比率が低くないか
  2. 有利子負債が多くないか(現金同等物の額と比較して)
  3. 営業キャッシュフローがマイナスかどうか
  4. 累積損失がないか(=利益剰余金がマイナスかどうか)
  5. 債務超過になってないか(=資産より負債の方が多い状態になってないか)
  6. 赤字続きでないか(目安:3年以上続いていないか)
  7. 会社概要に「継続企業の前提に重要事象」や「継続企業の疑義注記」の記載がないか

株主構成

「会社四季報」の「株主・役員・連結会社の状況」欄での「株主構成」もチェックしておくと良いでしょう。

ここには上位10名の株主が記載されています。ここから、経営者が大株主である「オーナー企業」や、他の上場企業1社に50%超の持ちの株保有をされている企業である「他の上場企業の子会社」を見つけることができます。
 
そして、「オーナー企業」や「他の上場企業の子会社」の場合、株式強制買い取りリスクがあります。大株主であるオーナーや親会社が、TOB(株式公開買い付け)により投資家から株式を買い取り、非上場化することがよくあるのです。
 
この場合、持ち株を売却しなければならず、含み損が損失として強制的に実現される可能性があります。早めの損切りをしておきましょう。
 
また、「財務大臣」が大株主のことがあります。このような企業の中には、オーナー企業で、オーナーが死去した時に相続人が相続税を現金で払えず、自社の株式を物納することで相続税を支払ったケースがあります。
 
この場合は特に、国が将来的に株式を売却する可能性が高く、株価上昇の阻害要因となります。要注意の銘柄と言えます。

外国人持ち株比率・投信持ち株比率

「会社四季報」の「株主・役員・連結会社の状況」欄の中では、「外国人持ち株比率」と「投信持ち株比率」もチェックをおすすめする指標です。

この2つの比率が高いほど、外国人や投資信託から優良企業として高く評価されていると言えます。
 
ただし、かなり高い場合には、すでに買いたい外国人や投資信託が買ってしまっている可能性があります。つまり伸び代がない、ということです。
 
さらに業績悪化などが発生したときには、外国人や投資信託が大量に持ち株を売り、株価が大きく下落する可能性もあります。
 
外国人持ち株比率・投信持ち株比率は、数%程度がちょうどいいと言えます。
 
なお、外資系企業の傘下にある企業の場合には、親会社である外資系企業の持ち株を差し引いた、実質的な外国人持ち株比率を計算することをおすすめします。

他の決算書の情報源もチェック!

上で述べたように、決算書の情報源としては「会社四季報」を読み込むことがまずは基本です。その基本を押さえた上で、さらにワンランク上の投資を目指したいのであれば、「会社四季報」以外の情報源もチェックしましょう。
 
それは「決算短信」そして「有価証券報告書」です。

決算短信

「決算短信」は決算発表書類の「速報版」と言えるものであり、投資家が企業の決算を最も早く知ることができる情報源です。
 
「会社四季報」に反映されていない最新の企業業績や業績予想を確認できるのが利点です。

有価証券報告書

「有価証券報告書」には、詳細な決算書や関連情報だけでなく、企業の沿革や役員の状況、設備投資の状況など、企業に関する詳細な情報が掲載されています。
 
資産運用のプロは読み込んでいますが、個人投資家レベルであれば、読み込むのに大変時間がかかりますし、ここまで手を出す必要はあまりありません。

まとめ

今回は、「テーマ株」とはどういうものであり、なぜ儲からないと言えるのかについて解説しました。

儲かる投資をしていくためには「決算書」に注目して、「成長株」「割安株」「復活株」と呼ばれるものを見つけ出していくことがおすすめである、というのが重要です。
 
また、「決算書」の情報源として「会社四季報」をまず読み込むことが、「成長株」「割安株」「復活株」を見つけ出していく第一歩であり、そのためのチェックポイントを7つ紹介しました。
 
この7つのチェックポイントとは、「売上高・経常利益」「業績予想」「欄外記載の『前号からの業績予想の変化』」「株価指標」「財務状況」「株主構成」「外国人持ち株比率・投信持ち株比率」でした。
 
以上を踏まえて、儲からない「テーマ株」に安易に手を出すことなく、ワンランク上の個人投資家を目指してください。