資産形成と資産運用の違いとは?
この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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「資産形成」と「資産運用」。

それぞれの言葉を聞いて、違いが何なのかわからずに悩んでいる人もいるでしょう。同様に、どちらも「資産を増やすもの」という漠然としたイメージを持っている人もいるでしょう。

事実、この手の話題に関するブログ記事などを検索しても、どこかふわっとした内容にとどまっていたり、上手く「お茶を濁している」ケースもあります。

同じような言葉だと思って使ってしまいがちですが、実は資産形成と資産運用にははっきりとした違いがあります。

この記事では、そもそも資産とは何かに立ち返ってわかりやすく説明したうえで、資産を形成するのと運用するのとでは何が異なるのかを具体的に紹介します。

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資産について確認

資産と聞くと、真っ先に「お金」を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、資産とは厳密に言えばお金だけを指すものではありません。

資産形成と資産運用の違いを考えるためには、資産について正しい理解することが重要となります。具体的なイメージができていないと、形成や運用について解説してもわかりにくいと思います。

ここではまず資産について正しく確認したうえで「運用とは何か」「形成とは何か」という順でそれぞれ説明していきます。

資産とは何かについてイメージができていると資産運用や資産形成に関する知識も付けやすくなります。

資産とはなにか

資産とはもともと会計用語として用いられていたもので、個人や法人が持っている全ての金銭的価値のある財産を意味します。

会計上では、次の3種類に分けることが可能です。

3つの「資産」とは
  1. 流動資産
  2. 固定資産
  3. 繰延資産

それぞれについて具体的にイメージしやすいように、簡単に内容を確認しておきましょう。

流動資産
まず「流動資産」とは、短期間で現金化が可能な資産を意味します。現金自体も流動資産ですが、他にも預金や貯金、株式や債券、ファンドなどの有価証券を含みます。受取手形や売掛金、商売をしている人なら商品や製品、立替金や仮払金なども流動資産です。

固定資産
固定資産とは短期間では出入りをしない資産で、現金化があまり行われないものを指します。不動産や保険が代表的なもので、工場などの設備も該当します。また、著作権や借地権のように、金銭的価値のある権利についても固定資産とするのが通例です。

繰延資産
「繰延資産」は企業会計における資産の考え方で、開業費や開発費、株式交付費や社債発行費などが該当します。損益計算の際に分割して償却可能な資産として、固定資産とは別に認められているものです。個人の資産としてはあまり該当するものがありません。

身の回りにある資産

それでは、資産についてもう少し具体的なイメージを持てるように、私たちの身の回りにある資産について考えてみましょう。

現金や預貯金は最もわかりやすい流動資産で、日本円だけでなくアメリカドルやオーストラリアドル、さらにはビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)も資産です。

投資をしている人の場合は、株式や国債などを持っているでしょう。将来のために個人年金保険に加入していたり、お金に困っている知人にお金を貸して借用書を持っていたりする人もいます。このような金銭的価値を持つものはすべて資産です。

金銀やプラチナなどの貴金属やダイヤモンドなどの宝石なども同様で、広い意味ではパソコンやデジタルカメラなどの換金性のある物品も全て資産に該当します。そのほかには車やバイクなどの高額な動産も、資産としてよく挙げられます。

また、土地や住宅などに代表される不動産も重要な資産です。自宅だけでなく不動産投資をしている人が持っているマンションやアパートなども、資産になります。

このように、一口に資産と言っても、その種類は多岐にわたっています。できるだけ広い意味で考えて金銭的な価値を見出せるものうち、自分が所有しているものなら自分の資産だというイメージを持つと良いです。

資産運用とはなにか

資産について具体的なイメージができたところで、まずは「資産運用」について理解を深めていきましょう。

資産運用とは「今ある資産を使って、資産の価値を高めること」を意味します。

資産運用は大きく分けると「貯蓄」と「投資」の二つの方法があります。ここでは、それぞれの詳細を解説します。

広義であれば預貯金も資産運用

現金資産を銀行に預金をしたり、郵便局に貯金をしたりしている人もいるでしょう。広義で言うところの資産運用は、このような預貯金も含みます。

資産をただ現金で持っているだけでは、その価値が高まることはありません。しかし、銀行にお金を預けておけば少しずつとはいえ利息が付き、資産の価値を高めていることになります。この預貯金は先の分類では「貯蓄」に該当するもので、元本が失われる可能性が極めて低く、専門的に言うと「リスクを伴わない資産運用」です。

資産運用というと「投資」のみをイメージする人が多いかもしれませんが、投資が預貯金などの貯蓄と区別されるのはリスクが伴うからです。例えば、現金を株式投資やFX投資などに使うと元本を失うだけでなく、それ以上の損失を生むおそれもあります。

参考:投資リスクとは何か

しかし、その反対に高い利益を生み出せる可能性も秘めていることが、投資の魅力です。

貯蓄と投資を利用して運用する

ここまでご説明したとおり、貯蓄も投資も今ある資産を使って、資産の価値を高める方法です。

資産を失うリスクがほとんど無いという点が貯蓄の魅力ですが、資産価値を高めやすいかどうかという点では貯蓄は投資にかなり劣ります。投資はリスクを負えば負うほどリターンもそれにつれて大きくなるものが多いからです。

投資が資産価値を高めやすいのなら、全部投資に回せば良いと思う人もいるでしょう。しかし前述のとおり、投資にはリスクを伴うので最悪の場合には全資産を失ってしまう可能性があることには注意が必要です。

生活をしていくうえでも、老後の対策をするうえでも、ある程度の資産は安全に維持していく必要があります。一方、リスクを恐れて投資をせず貯蓄だけにしてしまうと、せっかく持っている資産をうまく活用できません。

資産を上手に運用していくには、貯蓄と投資をバランスよく利用していくのが効率的です。一方だけにこだわらずに資産運用を検討するのが、賢い考え方なのです。

資産形成とはなにか

次に「資産形成」とは何かを理解しましょう。

資産形成は、「”資産”を一から築いていくこと」です。

資産運用との違いは後述しますが、資産形成のイメージを持てるように具体例を確認してみましょう。

1)仕事の給料を貯蓄する
2)本業以外に副業をして貯蓄する
3)生活費を削って貯蓄を増やす
4)貯蓄の一部を株式投資で資産運用をする

などの行動は全て資産形成です。

資産形成の主要な源泉は貯蓄

資産形成の具体例を見てみると働いて稼ぐことに加え、支出を減らすことも資産形成に含むことがわかるでしょう。資産形成には、これらの行動によって貯蓄を増やす事が最重要なのです。

貯蓄を増やすための行動とは
  • 就職する
  • 労働時間を増やして残業代を受け取る
  • 節電をして光熱費を減らす など

貯蓄が増え、生活資金に影響が無い余剰資金が生まれてきたころ、投資による資産運用の出番となります。

余剰資金としてどのくらいあれば投資に踏み切っても良いのかは人それぞれですが、目安としては300万円くらいあると落ち着いて投資活動を進めることができるでしょう。

もちろん、投資資金が多いと投資による利益もそれなりの金額になりますから、投資資金は多いに越したことはありません。

資産運用と資産形成の違い

ここまで資産運用と資産形成について解説してきましたが、結局この二つは何が違うのかご理解いただけたでしょうか。

どちらも結局は資産を増やすためのものなのではないかというイメージになってしまい、区別が付かなくなってしまっているかもしれません。

ここであらためて資産運用と資産形成を比較して、違いを明確にしておきます。

これまでも触れてきたように、資産を運用するのと形成するのは基本的な考え方が違うので、正しく区別できるようになりましょう。

資産運用は資産形成を行う「手段」

資産運用と資産形成の関係を理解するには「目的」と「手段」で分けられていると考えると良いでしょう。

例えば、老後の為に2,000万円を貯める場合…

2,000万円を貯めること自体が資産形成であり目的です。

その手段として、投資と貯蓄という2つの資産運用の方法があるのです。

このような関係性を理解できると、資産形成と資産運用の違いが明確になったことと思います。

つまり、資産形成という目的を達成するための手段として資産運用があるのです。

ではなぜ、貯蓄だけではなく、リスクをとって投資も行うべきなのでしょうか?その理由について、次に詳しく述べます。

投資による資産運用で資産形成のスピードを加速

資産形成は貯蓄だけでも十分ではないかという人もいるかもしれませんが、本当にそれで良いかはその時代の流れを汲んでよく考えなければなりません。

金利が高かった高度経済成長期には、銀行の定期預金に預けておくだけで安全かつ着実な資産運用が十分可能でした。

しかし、ゼロ金利時代と呼ばれる現代社会では、銀行や郵便局に預貯金をしておいても年利0.1%にすら届かない場合が多くなっています。資産の安全性という意味では良いかもしれませんが、資産運用という観点からは殆ど効果を期待できないのが現状です。

さらに経済が停滞した日本では、満足な賃金の昇給や退職金が望めなくなっています。だからこそ、老後の2,000万円不足問題が生じているのです。

参考:老後の2000万円不足問題とは?

これらのことから、効率的に資産形成を進めるには、貯蓄だけでなく投資による資産運用が重要になります。貯蓄で安全に資産を守っていこうと考えるのではなく「持っている資金はうまく運用する」という考え方で投資を進めていくことで、資金形成のスピードを加速させるべき時代なのです。

まとめ

この記事では、「資産運用」と「資産形成」の関係について解説しました。

資産形成が資産を築くという目的を指すのに対し、それを達成する手段が資産運用です。資産運用には大きく分けて貯蓄と投資の2つがあります。

現代社会においては、貯蓄に頼る資産形成だけでは老後資金が心許なくなりがちで、投資による資産運用も不可欠です。

余裕資金を投資によって資産運用すれば、より早く資産形成ができる確率も上がるでしょう。