iDeCo・NISAとは?違いの解説と賢い使い方
この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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iDeCo・NISAについての監修は、ファイナンシャルプランナーの平島 宏樹様にお願いしました。

この記事を監修した専門家
平島 宏樹
業界大手「確定拠出年金教育支援協会」に所属するファイナンシャルプランナー。
国内でまだ浸透しきっていない「長期分散投資」「確定拠出年金」を広め、お一人お一人に豊かな将来を築いていただくため活動している。
ご相談先:09068437202

老後を見据えた資金対策として、様々な制度が登場しています。きっと有用なものなのだろうと思いつつも、英語の略称ばかりで意味がよくわからず、活用に踏みきれないでいる人も多いでしょう。

「iDeCo」と「NISA」はその代表的な制度ですが、それぞれどのような内容なのかをご存知でしょうか。

この記事では、老後資金づくりのための二大制度「iDeCo」と「NISA」、そして「つみたてNISA」について違いを比較しながら解説します。

老後資金対策として効果的な使い方も紹介するので、上手に資産運用をしていきましょう。

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そもそも「iDeCo」と「NISA」ってどんなもの?

冒頭で触れたように「iDeCo」と「NISA」は老後資金づくりのための二大制度です。

人生100年時代を迎えようとしている今、どちらにも注目が集まりつつありますが、その違いについてはよく知らないという人も少なくありません。

まず最初に、それぞれの制度について概要を理解しておきましょう。

iDeCoとは

iDeCoとは「Individual-type Defined Contribution」の略称で、日本語では「個人型確定拠出年金」といいます。国民年金や厚生年金などの公的年金とは別に、自分で資金を拠出運用して年金資産を作ることができる制度です。

iDeCoは、定期預金や保険、投資信託といった運用方法を自分で選択します。拠出した掛金と運用益は60歳以降に受け取りが可能です。運用結果によって老後にいくら手に入れられるかが変わるため、加入者には投資に関する知識も求められます。

また、iDeCoは「拠出」「運用」「受け取り」の3段階にわたる税制優遇措置があるのが特色です。

iDeCoで運用した金融商品の利息や配当、売却益などの運用益は全額非課税となります。掛金についても全額が所得控除の対象です。さらに年金として受け取る際にも、受け取り方によって「公的年金等控除」または「退職所得控除」の対象となります。

NISA・つみたてNISAとは

一方、NISAとは「NIPPON Indivisual Savings Account」の略称で、イギリスの制度「ISA」の日本版として2014年に創設されました。日本語での正式名称は「少額投資非課税制度」です。

NISAには「NISA(一般NISA)」と「つみたてNISA」の2種類があります。

NISA(一般NISA)
NISAはNISA口座で購入した金融商品の運用益が非課税になる税制優遇制度です。1年間で120万円まで投資元本を拠出でき、株式や投資信託、REITなど様々な商品を運用することができます。運用可能期間は5年間と定められています。

つみたてNISA
つみたてNISAは文字どおり「積み立て」で運用します。運用商品は長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。1年間で40万円まで投資元本を拠出して運用することが可能で、最長20年間にわたって運用益が非課税になります。

運用益が非課税という点ではNISAもつみたてNISAも同じですが、毎年拠出可能な金額が少ない代わりに長期運用が可能なのが「つみたてNISA」の特徴です。

なお、NISAとつみたてNISAの併用はできません

【ジュニアNISAについて】
0〜19歳を対象とする「ジュニアNISA」は2023年末をもって廃止されることが決定しています。

iDeCoとつみたてNISAの大きな違い

続いては、iDeCoとNISAが制度としてどのような違いがあるのかを解説します。

「長期的に積み立てて資金を増やす」という観点ではiDeCoとつみたてNISAは類似していますが、以下の点は大きく異なります。

  1. 途中でお金を引き出せるか
  2. 掛金が所得控除の対象になるか

どちらも制度の利用を検討するにあたっては重要なポイントになるので、ここで正しく理解しておきましょう。

途中でお金を引き出せるか

iDeCoとつみたてNISA(およびNISA)は、掛金として拠出したお金を途中で引き出せるかどうかが異なります。

つみたてNISA(およびNISA)は非課税制度が適用となる証券口座を使って自由に投資を行える仕組みなので、投資した金融商品はいつでも売却して現金にすることができます。

一方、iDeCoは積み立てた掛金を「年金」として受け取るのを前提とした制度です。そのため、iDeCoは原則として60歳になるまではお金を引き出すことはできません

したがって、「老後の備えは欲しいけれど、急病や冠婚葬祭などで急な出費が発生した時に使えるお金も用意しておきたい」という人にはつみたてNISA(およびNISA)のほうが適していると言えるでしょう。 iDeCoは老後を見据えて着実に生活資金を蓄えていきたいという人に向いています。

掛金が所得控除の対象になるか

また、税制優遇措置についてもiDeCoとつみたてNISA(およびNISA)には違いがあります。

どちらも「節税しながら資産形成を行える」という点は同じですが、つみたてNISA(およびNISA)は投資によって得られた運用益のみが非課税の対象となっています。

それに対して、iDeCoは運用益が非課税であることに加えて、掛金も全額が所得控除の対象となります。つまり課税所得が減り、所得税や住民税の負担が軽減されるのです。

このように、節税効果で比較するとiDeCoの方が高いと言えるでしょう。長く続けることを前提として考えると、ここは重視しておきたいポイントです。

iDeCoとつみたてNISA、どちらがおすすめ?

iDeCoとつみたてNISA、それぞれの内容と違いがわかっても、一長一短な印象を受けたという人もいるかもしれません。

老後に備えて長期的に資金運用を行うなら、どちらの制度を選ぶと良いのでしょうか。

優先したいのはiDeCo

先述した違いを踏まえたうえで、老後資金づくりを目的とするのであればiDeCoを優先的に検討することをおすすめします。

できるだけ早い段階でiDeCoを始めておけば、毎年かかる所得税・住民税の負担を長期的に減らすことができるため、より効率的に老後資金を確保することができます。軽減された分を”リターン”としてとらえるなら、仮に金利が低い定期預金や保険商品だけで運用したとしてもメリットが大きいと言えるでしょう。

収入に余裕があるならつみたてNISAを上乗せ

今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、給料やボーナスが減額されるリスクがあります。中には「今のところはiDeCoの掛金を捻出するだけの余裕があるけれど、将来的にはわからない」という人もいるでしょう。

それならば、資金の一部をつみたてNISAに振り分けて積み立てするというのも一つの方法です。iDeCoとつみたてNISAは、どちらか一方しか利用できないという決まりはありません。

つみたてNISAは年間40万円までの積み立てが可能なので、収入面に余力があるうちに資金形成を加速させられます。

また、先述のとおりつみたてNISA口座で購入した金融商品はいつでも売却でき、その代金も口座から自由に引き出すことができるので、急な病気やケガといった”もしも”の時に対する備えとしても安心です。

制度改正でiDeCoとNISAはどう変わる?

iDeCoやつみたてNISA(およびNISA)をこれから利用するなら、このたびの制度改正についても知っておく必要があります。

2020年6月5日に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布され、iDeCoの制度が2022年に改正されることが発表されました。つみたてNISA(およびNISA)についても2024年に新制度が施行されます。

具体的にどのような点が変わるのか、それぞれ確認していきましょう。

iDeCoの変更点

まず、今回の制度改正によるiDeCoの変更点は以下の3点です。

  1. 企業型DC加入者のiDeCo加入要件
  2. 掛金の積み立て期間
  3. 受給開始時期

新制度では具体的にどうなるのか、一つずつ解説していきます。

企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和(2022年10月~)

まず、iDeCoの加入要件について、企業型DCに加入している人への対応が変わります。

企業型DCとは

企業型DCは「企業型確定拠出年金」のことで、企業が掛金を毎月積み立てし、従業員が加入者として自ら年金資産の運用を行う制度です。

この企業型DCを導入している企業で働く人たちは、これまで「労使の合意があり、かつ事業主掛け金の上限を引き下げた場合」に限りiDeCoを利用することができました。

2022年10月以降は、この2つの条件を満たさずとも企業型DC加入者の任意でiDeCoに加入できるようになります

ただし、企業が拠出した掛金に上乗せして加入者本人も掛金を拠出できる「マッチング拠出」を導入している場合は、企業型DCとiDeCoを併用することができません。どちらを選ぶかで掛金の上限が異なるので、慎重に検討する必要があります。

マッチング拠出とiDeCo 掛金の違い
iDeCoの掛金の上限は加入者の職業によって異なります。一方、マッチング拠出は「加入者が拠出できる掛金は企業側が拠出した掛金と同額まで」というルールがあります。どちらかを選ぶ際は、それぞれ拠出できる掛金の額を確認しておきましょう。

掛金の積み立てが「65歳まで」に延長(2022年5月~)

現在、iDeCoは「60歳未満」の人たちしか加入することができません。それが今回の制度改正により、2022年5月以降は「65歳未満」まで加入期間が延長となります。

すでに退職間近だからと加入を諦めていた50代後半の人たちも、今後は加入するメリットが十分にあると言えるでしょう。仮に60代前半の間だけ加入するとしても、その間は税制優遇を受けながら効率的に老後資金づくりが可能です。

ただし、60歳を過ぎてからiDeCoに加入できるのは「60歳以降も公的年金に加入している人」だけで、すでに40年分の保険料を納め終えた人は対象外となっています。例えば、20歳から一度も未納なく60歳まで保険料を納め続けたという人は、60歳を過ぎてからiDeCoに加入することはできません。

受給開始時期が「60歳~75歳の間」に拡大(2022年4月~)

さらに、積み立てたお金を受け取り始める時期についても拡大することが決まっており、基本的に公的年金制度と同じ形で受給開始時期を選べるようになります。

現在、公的年金は原則として65歳から受け取ることが可能となっていますが、希望に応じて「60歳~70歳」の間の好きなタイミングで繰上げもしくは繰下げして受給することも可能です。

この繰下げ受給の上限年齢が、今回の制度改正によって75歳に引き上げられることになりました。iDeCoについても同様に、現行の「60~70歳の間」から「60歳~75歳の間」に拡大されることになっています。

なお、60歳以上で新規加入した場合には「加入日から5年以降」に受給可能という形式に整えられます。

NISAの変更点

NISAおよびつみたてNISAは、個々に変更内容が異なります。

  • つみたてNISA:2042年まで期限延長
  • 一般NISA:新制度がスタート

それぞれ具体的にどのように変わるのかを確認してみましょう。

つみたてNISAは2042年まで期限延長

つみたてNISAを利用した積み立てが行えるのは、もともと「2037年(令和19年)まで」という期限が定められていました。

そのため、つみたてNISAがスタートした2018年から利用している人は年間40万円×20年=800万円までの積み立てが可能ですが、それよりも遅く始めた人は積み立てできる金額が少なくなってしまうのが現状です。

しかし、今回の制度改正によって5年間の延長が決定し「2042年(令和24年)まで」積み立てが可能になります。つまり、2023年(令和5年)までにつみたてNISAを始めれば、20年間の積み立て期間を最大限に利用できるのです。

これまでスタートが遅れたことでつみたてNISAの利用をためらっていた人にとっては喜ばしい制度改正と言えるでしょう。

一般NISAは新たな仕組みに

一般NISAについては2024年以降、これまでと仕組みが一新されます。

先述したとおり、現行の一般NISAでは投資元本として年間120万円まで拠出できます。これが新制度では、以下のような2階建て構造に変更となります。

  • 年間20万円を上限とする積み立て投資部分(1階部分)
  • 年間102万円を上限とする投資部分(2階部分)

投資対象商品についてもそれぞれ設定されていて、1階部分はつみたてNISAと同様に長期・分散・積み立て向けの投資信託、2階部分は個別株や株式型投資信託への投資が可能です。

なお、2階部分の非課税枠を利用するためには、原則として1階部分の積み立てを利用する必要があります。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

一般NISAでは、自分でどの個別株に投資するかを決めなければなりません。どの株を選ぶかによって、そのパフォーマンスには非常に大きな差が生まれます。

ウェルスパス投資顧問では、現役のファンドマネージャーが厳選した日本株の情報を、会員の皆様にお届けしています。無料メルマガもありますので、ぜひそちらのほうから勉強を始めてみてはいかがでしょうか。

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iDeCoを上手に活用する3つのポイント

制度改正にともない、これからぜひiDeCoを利用したいと考えている人もいるでしょう。

iDeCoは以下の3点に留意して利用すると資産運用の効果が高まります。

  1. 掛金をいくらにするか
  2. 金融機関はどこにするか
  3. 運用商品は何にするか

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

掛金をいくらにするか

まずは月々の掛金をいくらに設定したら良いのかを考えてみましょう。

掛金の違いによってどのような差が生じるのかを見てみるとイメージしやすくなります。掛金に関する上限のルールとあわせて詳しくご紹介します。

iDeCoの掛金の上限

iDeCoは掛金を基本的には毎月5,000円以上、1000円刻みで任意に設定できます。 ただし、以下の表に示したようにiDeCoの掛金は職業によって上限額が異なる仕組みになっています。

職業 掛金の上限(月額) 掛金の上限(年額)
自営業者・学生 6万8000円  81万6000円
専業主婦(夫) 2万3000円 27万6000円
会社員
(企業型DCがない場合)
2万3000円 27万6000円
会社員
(企業型DCのみ加入している場合)
2万円 24万円
会社員
(確定給付企業年金にのみ加入、または確定給付企業年金と企業型DCの両方に加入している場合)
1万2000円 14万4000円

先述したとおり、iDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり所得税・住民税が軽減されるという優遇措置があります。つまり、掛金を多く支払うほど節税額も多くなるという仕組みです。

ただし、専業主婦(夫)などそもそも課税される所得がない人や、収入が少なく課税所得には達していないパート・アルバイトなどの場合は節税効果は得られません。

満額を積み立てる必要はない

iDeCoの掛金は、必ずしも満額まで積み立てる必要はありません。

確かにこれまでは、節税効果を高めるために満額まで掛金を積むのが望ましいと考えられてきました。しかし、このコロナ禍で給料やボーナスが減額される可能性があること、さらにその不安がいつまで続くかわからないということを考えれば、満額まで積み立ててるよりも家計に無理のない範囲の掛金を設定しておくべきでしょう。

iDeCoを利用するうえでもっとも大切なのは、長期的に継続して積み立てを続けていくことです。万が一、収入が減ってしまった際にも積み立てを続けていける金額がいくらかを考えて決めるのが適切です。

希望掛金の平均額は月額1万円

野村総合研究所が2016年に実施した「iDeCoに関するアンケート調査結果(p18)」では、iDeCo加入意向者の希望掛金の平均額がまとめられています。

その結果によると、会社員・公務員が希望する掛金はおよそ月額1万円でした。満額近くまで拠出したいと考えている人もいる一方で「とりあえず1万円くらいから無理なく始めたい」と考えている人が多いことがわかっています。自営業者の平均希望掛金も月額1万5000円と、満額よりも少ない回答です。

毎月1万円ずつでも、仮に30歳から60歳までの30年間積み立てを継続できたとすれば、1万円×12カ月×30年=360万円になります。このように、1回の積み立ては少額だったとしても将来的には大きな金額になるので、負担にならない範囲で長く続けることが大切です。

掛金の見直しも可能

また、iDeCoは掛金の額を年に1回変更できる仕組みになっているので、収入の状況に応じて柔軟に積み立ての方針を変えていくことができます。

万が一、このコロナ禍で給与やボーナスが減って家計が厳しくなった場合は、掛金を最低額の5,000円まで減らしてしまうのも賢明な判断です。

iDeCoは手続きさえすれば拠出を停止することもできますが、そうすると運用によって老後資金を増やすチャンスを失ってしまうだけでなく、所得控除による税制優遇も受けられなくなってしまいます。また、拠出はストップしてもiDeCoを続けている以上は一定の手数料がかかるという点にも注意が必要です。

さらに、拠出を停止している期間は加入期間として認められません。加入期間によっては年金として受け取れる年齢も変わってくるため、つみたてNISAを併用している場合にはその分を回してでもiDeCoの継続を優先する方が良いでしょう。

金融機関はどこにするか

iDeCoを始める際には、iDeCoを取り扱っている金融機関でiDeCo口座を開設する必要があります。この金融機関をどこに決めるかというのも、開始時に考えるべきことの一つです。

続いては、金融機関を選ぶ際の重要なポイントを解説します。

iDeCoにかかる手数料

iDeCoの運用には「加入・移換時手数料」「口座管理手数料」「信託報酬(運用管理費)」の3つの手数料がかかります。金融機関を選ぶ上では、これらの手数料について理解しておくことが大切です。

加入・移換時手数料
加入・移換時手数料はiDeCoの開始時や企業型DCからの移換時にかかる手数料です。支払いは初回の1回のみ、定額で2829円となっています。

口座管理手数料
口座管理手数料はiDeCoの運用期間中に毎月かかる費用で、金融機関によって金額が異なります。

信託報酬(運用管理費)
信託報酬は運用管理費とも呼ばれていて、iDeCoで投資信託の運用中はずっと金融機関に対して支払うことになる費用です。総資産に対して年間何パーセントかが明示されています。

手数料の安い金融機関を選ぶのが重要

iDeCoは長期的に積み立てを継続するため、口座管理手数料の金額が大きく影響します。それほど差が出るものではないと軽視しがちですが、月単位ではたった数百円の違いだったとしても、数十年という期間で考えると受け取れる金額が大きく減ってしまう可能性もあるのです。

iDeCoの運用成績がプラスになるかマイナスになるかはわかりません。しかし、どちらの結果になったとしても口座管理手数料は必ず発生するマイナスですから、少なく抑えるに越したことはありません。

また、マッチング拠出を採用している企業型DCに加入している場合は、将来的に金融機関を乗り換える可能性も考えて、移換手数料についても頭に入れておきましょう。

加入期間が長くなるほど大きな差に

実際に、将来受け取れる金額に対して口座管理手数料がどれくらいの影響を与えるのか見ておきましょう。

「iDeCoナビ」によると、2020年12月現在の口座管理手数料は最低で月額171円、最高で月額629円、多くの金融機関が月額490円となっています(※税込)。

月額171円の金融機関を選んだ場合と、月額490円の金融機関を選んだ場合でコストを比較してみると、次のような差が出てきます。

月間 年間 20年間 30年間
月額171円の場合 171円 2,052円 41,040円 61,560円
月額490円の場合 490円 5,880円 117,600円 176,400円
差額 319円 3,828円 76,560円 114,800円

月額で見るとわずか319円の差ですが、20年間運用すると合計で76,560円、30年になると114,800円も差が開くことになります。仮に運用成績が同じであったとしても、口座管理手数料が高い場合は受け取れる金額が少なくなってしまうのです。

iDeCo口座を開設できるのは1つだけなので、できるだけコストの低い金融機関を選び出しましょう。

運用商品は何にするか

運用商品の選択はiDeCoでうまく資産形成ができるかどうかを大きく左右するポイントです。

掛金を運用する上でどのような観点から商品を選ぶと良いのかを理解しておきましょう。

運用商品の種類

基礎知識として運用商品の種類が元本確保型商品と元本変動型商品に分けられることをまず知っておきましょう。

元本確保型商品
元本確保型商品とは原則として元本(預けたお金)が保証される運用商品です。定期預金や保険がこれに該当し、積み立てた資産には所定の利息等が上乗せされていきます。

資金が減ってしまうリスクはほぼありませんが、現状としてはiDeCoの定期預金の金利は年0.01~0.02%程度です。税制優遇のメリットは活かせるものの、資産形成という観点では十分とは言えません。また、保険については途中で解約すると「解約控除」が発生し、元本割れする可能性があるので注意が必要です。

元本変動型商品
元本変動型商品は元本が保証されていない運用商品で、具体的には投資信託(ファンド)が該当します。

投資信託では運用成果が好調なら元本確保型より高い収益を得られます。しかし、運用成果が良くないと元本割れするリスクがあります。

投資対象によってリスクとリターンが異なる

iDeCoの投資商品はリスクとリターンのバランスが異なります。一般的に投資はリスクとリターンの兼ね合いを考えて選ぶのが大切で、iDeCoも例外ではありません。

リスクとリターンはアセットクラスや地域(国内/国外)による違いが大きく、基本的に高いリターンを期待すると想定すべきリスクも大きくなります

一般的な分類としては以下の通りです。

株式 債券 バランス型

 

国内

■国内株式型
日本国内の様々な株式に投資する商品。主に価格変動リスクが高くなる一方で高いリターンが期待できる。
■国内債券型
日本国内の様々な債券に投資する商品。金利リスクがあるものの比較的安定したリターンが期待できる。

■バランス型
株や債券などの資産や、円や外貨建ての資産を組み合わせて運用する商品。

値動きの異なる資産を組み合わせていることで、ひとつの商品で分散投資の効果が得られる。

 

海外

■外国株式型
海外の様々な株式に投資する商品。価格変動リスクと為替変動リスクがある一方で高いリターンが期待できる。
■外国債券型
海外の様々な債券に投資する商品。金利リスクと為替変動リスクがある。

投資スタイルの違い

リスクとリターンを考える上では、投資スタイルに応じた選び方も重要です。

投資信託では「インデックス型」と「アクティブ型」の2種類があり、運用方法も運用コストも異なります。

インデックス型投信
インデックス型投信は、日経平均株価やNYダウなどの株式指標(インデックス)に連関する値動きになることを目指して運用されているのが特徴です。シンプルな仕組みなぶん運用コストも低くなっています。

アクティブ型投信
アクティブ型投信はインデックスを中長期的に上回る成果を目指して運用されているのが特徴です。専門家によって選ばれた高い成長性が期待できる銘柄が運用されます。高いリターンを期待できる一方でリスクも高く、コストもインデックス型に比べて割高になります。

リスク許容度を考慮した資産配分を

運用商品を選ぶ際には自分が「リスクをどれだけ許容できるか」を考えてみましょう。年齢や収入の見通しに基づいて適切な資産配分をすると効果的な資産運用ができます。

リスクの考え方
一般的に、金融資産全体のリスク資産の割合は「100-年代(%)」が目安とされています。

しかし、実際にそこまでリスク資産を保有している人はあまりいないでしょう。非課税メリットのあるiDeCoだからこそ、積極的にリスクをとって運用するのも一つの方法ではないでしょうか。

おすすめは全世界の株式に投資するインデックス投信です。

特定の国や地域を対象に投資する投資信託の場合、その国の政治や経済情勢に対する依存性が高いことからリスクが高くなる可能性があります。全世界の国に分散投資しておけばリスクが分散され、値下がりへの不安を軽減することができるはずです。

まとめ

iDeCoもNISAも非課税部分があるお陰で資産形成を加速させられるというメリットがある制度です。

老後の生活に備えて資金づくりを始めるなら、基本的にはiDeCoを優先して、余剰資金の範囲内でつみたてNISAを併用するのが良いでしょう。

この記事で解説したポイントを押さえて運用を始め、豊かな老後を送れるように準備していきましょう。