長期投資とデイトレードの違い
この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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この記事では、デイトレードに代表される短期投資と長期投資の性質の違いを解説するとともに、長期投資とデイトレードのどちらを選ぶと良いのかを考えてみましょう。

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長期投資とは

長期投資は、成長が期待できる企業を見極め、企業の成長とともに株価が上がるのをじっくりと待ち、自分の想定した株価になった時点で株を売却して利益を得ることを期待する手法です。保有期間中には投資先企業からの配当金を受け取ることもできます。投資期間は一般的に、1年間から数年間の投資期間を想定しています。

このような方針で株式投資をすると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

長期投資のメリット

まずは一般的に知られている長期投資のメリットを確認していきましょう。

日々の株価変動に一喜一憂する必要がない

まず、長期投資は日常的に株価チャートを見て値動きの推移を細かく追跡する必要がないのがメリットと言えます。先述したとおり、長期投資は何年も株式を保有し続けて、企業の持続的な成長に伴って株価が上昇するのを待つ投資スタイルだからです。

株式投資では短期的な相場の値動きを見て「株価が下がってしまったけれど本当に大丈夫なのだろうか」と不安になることがよくあります。しかし、最初に長い目で見て成長する企業を投資先として選んでいれば「今は株価が下がったかもしれないけれど、数ヶ月後・数年後になればきっと上がっているはずだ」と信じて待つことができるでしょう。

投資時期も「今日買うか、それとも明日買うか」などと悩む必要がありません。数年後の大きな株価の上昇を期待して買うからです。

このように、気持ち的にも時間的にもゆとりを持って取り組めるのが長期投資の魅力です。

配当金を得られる

また長期投資は、企業の業績に応じて配当金を得られるのが魅力です。

さらに、その配当金を再投資していけば、複利効果によって資産形成を進めやすくなります。

複利効果とは

「複利」とは、運用で得られた利益を再投資することにより得られる利益を指します。運用による利益がさらに利益を生むことで資産形成を加速させられる効果を複利効果と言います。

長期的な運用をすればするほど複利効果は増大するので、将来的には大きな資産を築くことができるようになるのです。

長期投資のデメリット

一方、長期投資に取り組む際にはデメリットもあります。

すぐに利益を得ることができない

長期投資は資金を投じてからずっと売却せずに保有するため、すぐに利益を得るのが難しい点がデメリットです。長い目で見て利益を得ようと覚悟を決める必要があります。配当金や株主優待は受け取れますが、基本的には金額や商品価値も大きくはなく、権利確定日も年に数回しかないので、すぐにまとまった利益を得られるわけではありません

投資先の企業を選ぶ際にも、短期間のうちに急成長するかどうかを重視するのではなく、企業の動向や事業計画、財務状況や株価の推移などを総合的に考えて長期的な視野で選び出します。したがって数日や数週間といった短いタイムスパンで株価が大きく上がることはほとんどありません

将来の予測を立てるのが難しい

また、将来を予測するのが困難であるという点も長期投資のデメリットです。

企業が本当に数年後まで成長し続けているのかを予測するのは決して簡単なことではありません。3年、5年、10年と先になればなるほど予測が難しくなります

現在の企業の動向や業績、関連する業界の成長などを十分吟味したとしても、企業が倒産したり、業界そのものが不要になって縮小したりするなどの不測の事態は起こり得ます。

気付いたときには取り返しがつかない可能性もあることを念頭に置いて投資する必要があります。

短期投資(デイトレード)とは

デイトレードに代表される短期投資とは、株式を短期間だけ保有して繰り返し売買をする手法です。

デイトレードの場合は数時間単位での取引が一般的で、長くても1日に収めるのが特徴です。この他にもスイングトレードと呼ばれる1日~数週間の保有を想定する方法もあります。

このようなスタイルで投資をすると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

短期投資のメリット

まずは短期投資のメリットを見ていきましょう。

短期間で利益を得られる

短期投資は短いタイムスパンで利益を得られるのがメリットです。

デイトレードならその日のうちに取引を完了するように計画するため、毎日利益が得られます。数分で利益確定をする場合もあり、株式の売買によってお金を稼いでいるという実感も湧きやすいでしょう。

さらに、自分の都合の良い時間に取引を進められるのも短期投資の特徴です。午前中だけで取引を済ませるようにしたり、市場が開いてから閉じる頃までずっと取引をしたりするなど、様々なスタイルを選べます。

その時間枠内で利益が確定していくのが短期投資のメリットです。

海外のマーケットや決算発表の影響を受けない

デイトレードは市場がオープンしている時間に取引を始めて、クローズするまでに決済を全て完了するのが基本です。そのため、そのルールを守る限りクローズしている間に海外のマーケットが大きく動いても影響を受けることはありません。

決算時には発表と共に株価が暴落したり、相場が乱れて予測が困難になることもありますが、デイトレードならその前に決済しておいて相場が落ち着いた時点で取引を再開すればリスク回避が可能です。

相場が読めない時間帯を回避すれば、想定外の値動きによる損失を防ぎやすくなります。

短期投資のデメリット

一方、長期投資と同様に、短期投資にもデメリットがあります。

こまめにチャートを確認する必要がある

短期投資の場合、取引をしている最中はこまめに株価チャートをチェックしなければなりません。短期投資は企業本来が持つ価値や成長性ではなく、値動きに対して投資をするスタイルだからです。

そのため、短期投資ではチャートから値動きを読む「テクニカル分析」が中心になります。中長期の値動きを予測するのに良いとされるファンダメンタルズ分析は補助的に用いるのが通常です。

つまり、短期投資ではチャートを常に見て分析をし続ける集中力や体力、忍耐力が求められます。時間を毎日十分に確保できないと取引を進められない点もデメリットと言えるでしょう。

取引回数が増えると手数料がかかる

株式投資では売買の都度、手数料がかかるのが一般的です。デイトレードでは短時間のうちに繰り返し売買をするので取引回数が多くなり、手数料がかさんでしまうのがデメリットです。少額の利益しか得られないと、かえって損失になります。そのためコストのぶんまで稼がなければならないというプレッシャーもあります。

※証券会社によっては、1日何度取引しても定額のプランを出しているところもあります。参考:おすすめの証券会社8選

長期投資と短期投資の決定的な違い

長期投資と短期投資のメリットとデメリットを見てみると、一長一短でどちらが優れているとは一概には言えないと思った人もいるでしょう。

しかし、この二つの投資スタイルには決定的な違いがあります。

それは、長期投資と短期投資は投資期間だけではなく「自分自身が働くかどうか」という点が異なります。この観点から長期投資と短期投資を比較してみましょう。

長期投資は「ビジネスオーナーになる」こと

長期投資は、いわば「投資先企業のビジネスオーナーになる」という投資スタイルです。

企業や事業に対して資金を投じ、その現場で働く優秀な人材が生み出した利益の一部を株主として享受する、と考えるとわかりやすいでしょう。優れた能力を持っている人たちが働いて企業が成長すればそれだけ株価が上がり、配当金も手に入ります。

長期投資は自分自身が仕事をするのではなく、利益を生み出す力を持っている企業に働いてもらうスタイルなのです。

短期投資は「自分の時間と能力で利益を得る」こと

一方、短期投資は「自分自身の時間と能力を切り売りすることで利益を得る」投資スタイルです。

株式市場がオープンしたらチャート分析をして売買のタイミングを考え、適切なタイミングで注文を出して利益を積み上げていきます。

もちろんこのようなスタイルで資産を築くことに成功した人も存在しますが「取引中ずっとパソコンに張り付いてチャートを眺め、売買を繰り返す」というやり方は労働しているのと変わりありません。自分の時間を使い、能力を生かして稼いでいることになるからです。

結局、長期投資と短期投資はどちらがいいのか

「企業のオーナーとなるか、自分自身で働くか」という観点で見ると、長期投資と短期投資には大きな差があると気付いたでしょう。

それでは、株式投資をするときは一体どちらのスタイルで取り組んでいくべきなのでしょうか。

以下の二つのポイントを考慮してみると、長期投資の方が一般の人には合っているという事実が見えてきます。

誰しも時間は有限である

誰にとっても1日は24時間しかなく、1年は365日しかありません。有限な時間をどのようにして配分するかによって、1日や1年で生み出せるものも大きく異なります。

長期投資は選定した企業の経営者や従業員に働いてもらうことで、自分の時間をほとんど使わずに利益を生み出すことができる方法です。自分の有限な時間を有効活用する手段として優れている投資方法だと言えます。

自分自身が働ける期間も限られている

医療の発展や衛生環境の向上によって長寿命化が進み「人生100年時代」とも言われるようになりました。近年では定年を迎えてからも働き続ける人が増えてきていますが、それでも元気に働ける時間は限られています。体は健康だったとしても、記憶力や判断力といった部分は多少なりとも衰えが生じてくるでしょう。

そうなると、記憶力や判断力が求められる短期投資は、加齢とともに難しくなっていきます。

一方、長期投資は自分自身が働けなくなった場合でも、投資先の企業が成長すれば資産を増やし続けることが可能です。それならば最初から、長期投資の知識を得て、生涯、資産運用をできるようにしておく方が得ではないでしょうか。

長期投資で成功した人物

長期投資を選ぶのが良さそうだとはわかっても、本当に成功できるかが不安になるかもしれません。

しかし、世界的に有名な投資家の中には長期投資で成功した人が数多く存在します。

ここでは長期投資によって莫大な資産を形成するのに成功した人物の代表例として、ウォーレン・バフェットとロナルド・リードを紹介します。

ウォーレン・バフェット

世界三大投資家の一人として有名なウォーレン・バフェットは、世界最大の投資持株会社バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOで、同社の筆頭株主にもなっています。「投資の神様」の異名を持ち、世界中の投資家から称賛されている人物です。

ウォーレン・バフェットの投資スタイルは「企業のオーナーになる」という気持ちで株を購入し、何年にもわたって保有をするのが特徴です。自身も愛飲しているという「コカ・コーラ」の株は、30年以上も保有していることが知られています。

企業の将来性を徹底的に調べあげて購入するスタンスを崩すことなく貫き通してきたことにより、大きな資産を築き上げるのに成功しています。

バフェットに関連した記事:バフェットの投資思考 / バフェットとは?

ロナルド・リード

ガソリンスタンドやデパートの従業員として働いていたというロナルド・リードは、一見するとどこにでもいるごく普通の男性でした。しかし、92歳で亡くなった際に遺産を調査したところ、9.7億円に相当する株式を保有していたことが判明して話題になりました。

実はロナルド・リードは株式投資を趣味としていて、超長期投資の方針を持っていました。「買ったらもう売らない」という単純明快なスタイルです。

そして、保有していた95銘柄はどれも「自分にとって馴染みがあって配当金が出ているもの」を選んだだけだったと言われています。

こうしたシンプルな考え方でも、長期投資なら莫大な資産を形成できる可能性があるのです。

まとめ

長期投資と短期投資にはそれぞれ異なるメリットがあるのは確かで、取り組む上ではどちらにもデメリットがあります。

しかし、投資とは本来「資金を提供し、自分自身よりも優秀な人たちに働いてもらう」ことで資金を増やす手段です。

自分自身の莫大な労働力に頼るデイトレードよりも、長期投資の方が、投資の本来あるべき姿だと言えます。

有限な時間を有効活用して成功している人物に学び、長期的な保有を前提とした株式投資に取り組んでいきましょう。