将来のために投資を始めたいという漠然としたイメージを持っていても「本当に株式投資がベストなのか」と悩んでしまうこともあります。
他にも投資方法はたくさんあるので、やるなら最も自分に合っているものを選びたいと考えるのは当然とも言えるでしょう。
では、株式投資に取り組むことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では株式投資を通して得られるものを一通り紹介したうえで、株式投資に向いているのはどういう人なのかも詳しく解説します。
株式投資は簡単か?
投資全般に興味がある人にとって、まずは取り組みやすい投資を選びたいと考えるのはもっともなことです。簡単に始めることができて、しっかりと利益を得られるなら株式投資にしたいという人も多いでしょう。
株式投資が簡単かどうかについては、賛否両論があります。
確かに株式投資の基本的なルールはそれほど難しいものではなく、運用の仕方も選べます。ただ、失敗している人もいるのは事実なので、安易に簡単だとは言い切れません。
ここでは株式投資が簡単なのかどうかを見極めるために、2つの切り口から考察してみましょう。
自分のペースにあわせて資産を運用できる
株式投資は、自分なりの投資スタイルで運用できるのが特徴です。
投資に費やせる時間がいつ・どのくらいあるかは人によって異なります。どのくらいのタイムスパンで取引をしていきたいかも違うでしょう。
株式投資は「デイトレード」「スイングトレード」といった短期取引のほか、中長期取引を選ぶこともできます。自分の運用したいペースにあわせて投資スタイルを決められるのがメリットです。
金額も1単元あたり数万円で買える銘柄(※)がたくさんあり、少額投資で始めて株式投資がどのようなものなのかを見てみることもできます。
少し取引をしてみてから、本格的に資金を投入するといった投資の始め方も選べるのです。
株は1株、2株などのバラ売りではなく、基本的に100株単位で取引するのが一般的です。そのため、仮に1株100円の銘柄がある場合は100円x100株=100株1万円が取引単位となります。103株を取引する、といったことも原則として出来ません。
投資に対する時間や頻度に関する束縛がない点で、株式投資は始めやすいのは確かです。十分に資金があって時間的にも余裕があるのなら、デイトレードをしながら長期投資もするといったやり方をする選択肢もあります。
取引の仕方は一つに限る必要はなく、資金や時間に応じて自由に決めることが可能です。試行錯誤をしながら自分に合った投資スタイルを見つけていくと、取り組みやすいだけでなく収益も出しやすくなるでしょう。
注意点をおさえて運用する
株式投資は簡単に利益を生み出せるのかというと、一概にはそうとは言えません。どのような投資でもリスクはつきものなので、投資をする以上は避けられないと考えた方が良いでしょう。
株式投資では例えば値動きが予想外の方向に進んでしまったときには損をすることになります。現物取引で買った株価より値下がりを起こせば元本割れを起こすことは必至なので注意しなければなりません。
ただ、リスクを理解して対策をしていき、得られるものを大きくしていくというスタンスで取り組んでいくと、メリットが飛躍的に増大します。
例えば、値下がりして回復の見込みが無いと思う銘柄について、これ以上損失を拡大させないためには、「損切り」が必要です。値下がりしたときにいつ売却するかを見極めるのは慣れないうちはかなり難しいのは確かです。保持し続けたために大損をするリスクを回避するには、損切りのルールを決めておくのが賢い方法でしょう。
また、一つの株価の動きで資産が大幅に増減してしまうのを防ぐために「分散投資」をする方法もあります。複数の銘柄を購入して取引すれば、一つだけ予想から外れて損切りをしてもトータルでは利益を生み出せるでしょう。複数投資でリスクを分散させることで、資産形成の確実性が高まるのです。
分散させた分だけ利益幅も小さくなる可能性があることには留意する必要はありますが、株式投資は「やり方次第でリスクを下げる戦略を立てられる」ということは覚えておくと良いポイントです。
株式投資で得られるものとは?
それでは、本題に入っていきましょう。
数ある投資の中から株式投資を選んで取り組んでいくのにはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは株式投資を通して得られるものが何かを詳しく解説します。
株式投資で得られるものは、株価の値上がりによって生じるキャピタルゲイン以外にも大きく分けて3つあります。それぞれについて詳しく掘り下げて説明するので、株式投資に本格的に取り組んでいく魅力を理解しましょう。
配当金や株主優待が受けられる
株式投資をすると、企業の株主としての立場を得られます。会社法によって株主には権利や義務が定められていて、その一つとして利益配当請求権があるのは魅力としてよく注目されているものです。
企業が事業を行ったことによって得られた利益の一部を株主に対して配当金として還元しています。その配当金を請求する権利が利益配当請求権です。基本的には保有している株式の数に比例して配当金を受け取ることができます。
配当金(※インカムゲインの一つです)が支払われる頻度は企業によって異なりますが、一般的には年に1回もしくは2回支払われています。業績が良ければ配当が上がり、株価も上がるのが一般的なので利益が増大する魅力的な仕組みです。
また、株主優待を提供している企業もたくさんあります。株主優待も株主への利益の還元の一環として行われているもので、通常は製造している製品を提供したり、サービスを株主優待価格で利用できたりする仕組みです。株主優待を目的にして株式を持つ人もいるほど内容が充実しているケースもあります。
企業の経営に参加できる
株主になると、事業経営に必要な資本の出資者の一人として経営に関わることができるようになります。
株式会社では定期的に株主総会を開催して、事業や財務などの状況を報告し、事業計画に沿って進められているかどうかを報告しています。株式を購入して株主になると株主総会に参加することができるようになり、意見を言ったり質問をしたりすることが可能です。
株主総会はただの報告会ではなく、企業経営をする上で重要な決議をする場面でもあります。内容は資本金を増減させたり、配当に関する決議をしたりするお金に関わるものから、吸収合併などの契約締結に関わる決議をしたり、取締役の選任や解任をしたりする事業に関わる内容まで多岐にわたります。
株主には持ち株数に応じた議決権がも与えられます。そのため最終的な決定は大株主の意向を反映したものになりがちですが、たとえ少数株主でも意見があるのであれば、株主総会でその意見を表明し、間接的に企業経営に参加することのは非常に大切なことです。難しいことではありません。
世界の情報にアンテナを張ることができる
株式投資をすると、世界の情報に常に詳しくなれます。
株価の変動は個々の企業の業績によって影響を受けるのは確かですが、それだけで決まるわけではなく、実際は様々な要因から影響を受けています。
- 景気の変動
- 政治の動向
- 世の中のトレンド など
国内の株式市場であっても世界情勢によって大きく値動きを起こすので、株価がこれからどのように動いていくのかを見極めるためには世界規模でアンテナを張っておくことが欠かせません。
資産形成をしようという意志を持って株式投資に取り組んでいると「この株式に今ここで投資して良いのか」「損切りをするタイミングは今なのか」などと悩むことがあります。その投資判断をするためには、様々な情報から根拠を見つけなければなりません。そして最終的には、経済や政治などに関する知識に基づいて判断を下すことになります。
そのため、株式投資をしていると自然に世界からの情報を集めるようになり、その情報を的確に扱えるように知識をつける意欲も生まれます。
株式投資に向いている人の条件
株式投資で得られるものは多いとしても、結局は資産形成ができなければ意味がありません。多くのメリットを享受するためには資産を増やせる投資を進められることが必要です。
このような特徴から考えると、株式投資はどのような人に向いているのでしょうか。
ここでは総合的に考えて資産を増大させられるだけでなく、株式投資に取り組むことで得られるものが大きい人に共通するポイントを説明します。
自分のマインドを分析して、該当するかどうかを見極めてみましょう。
長期的な目線で考えられる
物事を長期的な目線で考えられる性格の人は、株式投資で得られるものが多いでしょう。株式投資による資産形成に取り組むうえでは、「長期投資によって利益を得る」というのが重要な考え方です。
冒頭で説明したように、株式投資は投資スタイルの自由度が高いのは確かですが、得られるものが多いかどうかは話が別となります。
デイトレードやスイングトレードで稼ぎたいと考えるかもしれませんが、株価は数時間や数日という単位で激しい変化を起こします。限られた情報から判断して短絡的な考えで投資をしてしまうと大きなリスクを負うことになりかねません。
株価の動きは長期的に見ればわかりやすい傾向がありますが、短期的には利益が発生するタイミングの見極めが難しく、売買のタイミングを見誤ってしまいがちなので注意が必要です。
また、長期投資として取り組まなければ配当金や株主優待などのメリットも享受しにくく、議決権を行使して経営に関わっていくこともできません。腰を据えてこの企業に投資するというスタンスで投資をした方が様々な形で利益を得られます。
投資先の企業や事業範囲に含まれている業界などにも詳しくなれるので、より合理的な投資判断を行える力も身につくでしょう。
投資前にさまざまな情報を収集し判断できる
情報に対して貪欲で収集心があり、何か行動を起こすときには情報に基づいてしっかりと考えて判断する習慣がある人も、株式投資で多くのものを得られます。
投資判断をするときには幅広い情報を手に入れて分析し、ここに投資したら利益を得られるという根拠を探すことが大切です。たくさんの情報を意欲的に集めることができ、さらにその内容をよく理解して根拠のある判断ができる人は、利益を生み出す投資活動を進められるでしょう。
しかし、市場の株価がどのように動いているかといった限られた情報だけで投資判断をしてしまうと、他の要因によって大きな値動きが生じたときに予想が外れて損失を被るリスクが高くなります。他にもこの企業の株価に影響するものがあるのではないかと疑い、多角的な視点で貪欲に情報を集められる人は、投資のチャンスを正しく見つけ出せる可能性が高いのです。
情報収集をしていると、投資先として候補にしたい企業も増えていきます。その企業の事業内容などを学んでいると、関連企業の評価も変わっていくでしょう。対比をするのは重要な考え方で、投資先として考えている企業の価値が本当に高くなると考えられるのかを見極めるのに役立ちます。
そのためには十分な情報が不可欠なので、情報の収集心が強い人は株式投資に向いています。
株式投資に向いている人へマインドチェンジをしよう
株式投資に向いている人の特徴を見てみると、自分はあまり向いていないのではないかと不安になる人もいるでしょう。株式投資を始めても失敗するリスクが高そうだと感じて諦める気持ちになっているかもしれません。
実は、私たち日本人には「長期投資をする」という感覚が身についていません。
1989年のバブル崩壊以降、日経平均株価は横ばいが続き、多くの銘柄が長期的に保有し続けていても株価が上昇しない・それどころかむしろ下落している状況が続いています。このことにより、長期投資家の資産が増えていない事がその一因と、本サイトでは考えています。
上記のような背景も手伝い、日本人にとって「長期投資をする」という選択肢が一般に根付きづらかったのでしょう。
一方、世界に目を向けるとどうでしょうか。
例えば、アメリカの大型株500銘柄の株価から算出される株価指数「S&P500」は毎年10%弱の上昇を続けており、端的に言えば上昇トレンドが続いています。つまり、株を買って保有しておくだけで勝手に資産を増やすことができるわけです。これにより、多くのアメリカ人投資家には「長期投資をする」というマインドが根付いています。
株式投資の基本は今後長い間にわたって企業がどれだけ成長していくかを評価して投資をすることです。「投資の神様」として知られるウォーレンバフェットも、投資した翌日から5年間は市場が閉ざされると考えて投資することを述べていて、目の前の株価の値動きに惑わされずに長期的な視野を持つ重要性を説いています。
農地を購入するときには土地の価格が上がるかどうかを考えるよりも、売れる作物を収穫できる優良な土地かどうかを重視するでしょう。株式投資も同じように、価値のあるものを生み出せる企業に投資することで資産形成をすることができます。
株式投資を成功させるには、株式市場の目下の動きに気持ちを奪われてしまう投機的思考を捨てて、企業の成長に投資する思考へマインドチェンジすることが大切です。日本でも株式投資家として成功している人が数多くいるのは、マインドチェンジに成功しているからに他なりません。
株式投資で成功する人の多くは、長期投資と情報収集の習慣を身に付けています。日本では長期投資は難しいと考えるのではなく、株式投資成で功するために必要な行動の土台を作り上げることで、株式投資に向いている人になれるでしょう。
長期的に見て利益を生み出す株式投資を心がけることで、良い投資結果を出せるようになるはずです。
まとめ
株式投資は自分なりのスタイルで投資をすることができ、リスクもよく知られているので回避しながら進めることが可能です。
株式を購入すると株主として配当金や株主優待を手に入れたり、企業経営に間接的に参画することもできる魅力があります。多様な情報を集めて長期的な視野で投資判断ができる人は、大きな結果を出せるでしょう。
その自信がない人もマインドチェンジをすれば問題ありません。株式投資に向いている人の特徴を改めて理解し、投資に対する考え方を一新して株式投資に取り組んでいきましょう。
- ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
- 複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
公式サイト
専門家からのコメント
最近はESG(環境、社会、ガバナンス)という視点から株式投資を語られる局面が増えてきました。
企業の長期的な成長のためにはESGの3つの観点が必要だという考え方が、世界的に広まっているからです。ESGを尺度として投資先を決めるいわゆるESGファンドも、その規模が年々大きくなっており、ファンダメンタル(企業の成長)な面からだけではなく、そうしたファンドによる売り買い(需給)的な面も加わることで、ESGの株式投資における重要度がより増しています。
そうした時代において、ESGの影響を実生活において大きく受ける個人投資家の皆様が、その日々の生活の観点から企業にアドバイスをする(例えば株主総会で意見を表明する)ということは、企業にとっても有益なことであると思います。