株式投資の間違った考え方

株式投資をしていると、いくらやっても損ばかりしてしまうこともあります。そのような噂を人づてに聞いてしまい「自分も失敗するのではないか」と心配になって株式投資にチャレンジできないでいる人もいるでしょう。

株式投資は、必ずしも損な結果に終わるとは限りません。実は、損をしてばかりいるというときには、間違ったやり方で株式投資に取り組んでいる可能性があります。

この記事では投機的な株式投資や愛着型の株式投資について紹介した上で、資産を増やしていくために必要な正しい株式投資の考え方をわかりやすく解説します。

投機的な株式投資

株式投資はあくまで「投資」の一つとして行われていますが、投機的な株式投資も存在します。投資と投機は言葉が似ていると混同されてしまうこともありますが、両者には決定的な違いがあるので注意が必要です。

辞書的な意味ではこの二つの言葉にどのような違いがあるのかについて触れながら、投機的な株主投資とはどのような取引の仕方なのかを考えてみましょう。

基本的には、投機の考え方で投資をするのは危険だと考えられています。投機というのは、冒頭で挙げた「株式投資の間違った考え方」の一つとして知られているものなのです。

その理由についても詳しく説明するので、投機的思考による株式取引はなぜ避けるべきなのかを理解しておきましょう。

投機的な株式投資とは

株式取引では、投資した株式が予想したような形で値動きをすると期待して資金を投入するのが基本です。その際の考え方として、主に短期的な視野で大きな利益を上げることを目指して取引をすることを「投機的」といいます。

数時間や数日などといった短い期間で大きな値動きを起こす可能性が高い株式を狙って投資し「当たれば大きな利益を得られるけれど、外れたら資産を失う」というのが投機的な株式投資の特徴です。

投機的な株式投資は、よくギャンブルに例えられます。ギャンブルは当たるか外れるかを予想して、当たったら何倍ものお金が手に入り、外れたら賭けたお金がなくなるからです。

投機的な投資家が存在する?

現実問題として、カジノに行ってスロットやルーレットなどで「儲けたいけれどお金がなくなるかもしれない」というスリルを味わいながら取り組んでいる投資家は決して少なくありません。中には本当にギャンブルと同じ感覚で、値動きの根拠があまり定かではない投資先に莫大な資金を投入していることがあるのも事実です。

このように投資した株式が運よく値上がりすれば一攫千金になる一方、悪ければ莫大な資金を失ってしまうハイリスクハイリターンな性質を持っているのが投機的な株式投資です。安定して利益を得られるようにする方法ではないので、将来目標に向けた資産形成には向きません。

投機的思考から抜けられないなら投資はしない

先述した通り、投機的な株式投資はリスクが高い投資の方法です。

もし投機的思考から抜け出すことができないのなら、株式投資に限らず、投資そのものを諦めるのが無難でしょう。資金を運用することによって増やすつもりが、減らす一方になってしまうリスクが高いからです。

場合によっては投資の失敗を取り返そうとして、借金してまで投資を続けようとするケースもあります。それが原因で、債務整理をすることになった事例も少なくありません。

投機的思考については「投機」という言葉そのものの意味を正しく理解することで、脱却できる可能性があります。投機と投資の意味を混同しているために投機的な考え方で株式投資をしてしまう人も大勢いるので、あらためて辞書的な意味を確認しておきましょう。

「投機」とは
投機とは短期的な市場価格の変動により利益を得ようとする行為のことで、不確実だが当たれば利益が大きい方法を狙うことを指します。レバレッジをかけて利幅を広げたり、取引回数を増やしたりして利益を増やすことを目指すのが一般的です。

「投資」とは
投資とは、利益を得る目的で将来有望な企業や事業に資金を投入し、その価値が向上した結果として生まれる利益や配当を得る行為を指します。通常は長期的な視点で取り組んで安定した利益を得ることを目指すのが特徴です。

このように投機と投資は互いに性質が異なるため、投機的な思考で投資行為をすると大きなリスクを負うことになるのです。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

上記の投機・投資の考え方は通説・辞書的な意味ですが、私はこのように考えています。

  • 投資:リスクとリターンを理論(正しいかどうかは問わない。なぜなら絶対的に正しいものはない。)的に説明できるものへ資金を投入する行為
  • 投機:リターンを得る理論が説明できない乃至根拠が希薄なものへ資金を投入する行為

この定義から言うと、例えば、

  • 周辺より安い土地があり、安い理由が明白で、将来その理由が解消する可能性が高い土地を買う
  • 過去の価格推移が似ている2銘柄が、一時的に値動きが乖離したところを狙って、その乖離した値幅を取りに行く

という行動は、投資です。
どちらも価格のみに注目していますが、資金を投入する理由が明白なので、投資だと考えます。

更に言えば、

「短期的」に資金を投入することを以て、投機とは言い切れない
→ 短期の方が、余計なニュースが出ることが少ないため、外部要因に左右されにくい、というメリットがあります。

レバレッジをかけた投資が、投機であると言い切れない
→ レバレッジをかけた場合、損益の振れ幅が大きくなるだけです。これを以て投機とは言い切れず、あくまで資金投入に理論的説明ができるかどうかを以て、投資・投機を区分するべきと考えています。

愛着型の株式投資

株式投資に対する間違った考え方として、もう一つ「愛着型」の株式投資が挙げられます。

現在、上場している銘柄は約4000銘柄もあり、初心者の多くはどれを買えば良いのか悩んでしまいます。そこで最初は「自分の身近にあるメーカー」や「TVCMなどでよく目にするような知名度の高い企業」といった、親しみを感じる株を購入するケースが多いのです。

しかし、そのようにして選んだ銘柄が、必ずしも資産形成に役立つとは限りません。

ここでは愛着型の株式投資がどのような考え方なのかを詳しく紹介します。何が問題なのかを意識しながら読み進めることで、株式投資の本質も理解していきましょう。

愛着型とは

愛着型の株式投資とは、企業に対する愛着心に基づいて投資判断をする方法です。

「ずっと大好きだったブランドの企業があるから、この企業の株式を買って応援しよう」というのが典型的なパターンです。

愛着型の投資の例
  • いつも乗っている車のメーカーに投資しよう
  • 大好きなお菓子のメーカーに頑張って欲しいからお金を出そう
  • 好きなスポーツチームを支援している企業だからここに資金を投入しよう

このように、愛着型は好きだという気持ちを原動力にして、応援しようという意識で投資先を決定するスタイルと言い換えることもできるでしょう。初心者が最初に投資先を決めるときによく選ばれる考え方でもあります。

「せっかくなら自分の好きな会社に投資したい」と考えるのはもっともなことでしょう。この企業でなければ投資で成功できないと言えるような一社が見つかったのならともかく、複数の候補があってその中の一つが大好きな企業だったら選びたくなるのも当然です。

しかし、愛着型の株式投資は失敗するリスクの高い考え方ということもよく知られています。実際に愛着型の株式投資で失敗してしまい、そのまま損失を増やし続けてしまうパターンは少なからずあるので注意しなければなりません。

愛着型は応援であり投資ではない

愛着型の株式投資をしそうになったときに考えなければならないのが「そもそも投資とは何か」ということです。

投機的な株式投資のところで簡単に触れましたが、投資とは企業の価値が上昇することを期待して利益を得るために資金を投入する行為を指します。その際にはリスクが発生することを受け入れて、長期的な視野で確実性の高い資金運用をすることで利益を上げるのを目指すのが基本です。

しかし、愛着型の考え方では純粋に「その会社が好きだ」という気持ちに動かされています。愛着型は利益を得る目的を最大限に追求しているのではなく、あくまでその企業への愛好心を原動力にして応援する行為なのです。その気持ちが強くなっているときほど冷静さを失ってしまっていることに、自分でも気づいていない場合が多いでしょう。

このように、正しい投資判断ができない状況に陥っている認識がないまま資金を投入してしまうことだけが問題ではありません。愛着型では希望的観測で成長すると信じて株式を持ち続けて、失敗するケースもあります。

株価が暴落する一方になっていても塩漬け株として保有を続けてしまい、資金形成の足かせになることすらあるのです。本来は四季報やIR情報などの客観的指標を用いて投資先や引き際を判断する必要がありますが、愛着心が強いとどちらも見誤るリスクがあるのです。

正しい株式投資とは

間違った株式投資として、投機的な株式投資と愛着型の株式投資という二つの典型的なパターンを紹介してきました。どちらも確かに大きなリスクを負う投資の仕方だということがわかったでしょう。

それでは、逆に正しい株式投資とはどのようなものなのでしょうか。本当に正しい株式投資をするために何が必要なのかをわかりやすく二つの項目を挙げて解説します。

これまで間違った株式投資について詳しく説明してきたのは、その裏返しの面もあるからです。投機的な株式投資、愛着型の株式投資の特徴を念頭に置きながら、何が違うのかを意識して正しい株式投資について理解を深めていきましょう。

利益を見込める企業へ投資する

株式投資に取り組む際には、企業が価値を高めて成長していく可能性が高いことを確認し、利益を見込めると判断できたら投資するというスタンスを守るのが大切です。

投資は投入した資金を増やすことを前提にして行うものなので、投資先の企業が利益を生み出して成長していき、市場株価が上がらなければ意味がありません。

市場株価は企業の事業以外にも政治や競合他社などの様々な要因によって変動しますが、長期的な視野で見ると企業が成長すれば着実に株価は上がっていくのが一般的です。利益を見込める事業を行っていて、将来性がある企業かどうかを見極めるようにしましょう。

投機的な株式投資をしている人も、このような視点を持っていることがあります。しかし、愛着型の株式投資では好き嫌いの感情の方が優先されてしまい、利益を生む企業なのかどうかが見えなくなりがちです。好きな企業を応援すること自体は間違ったことではありませんが、投資判断をするときには好き嫌いの感情を一度無に帰してしまいましょう

そして、本当に株価が将来的に上がっていくような事業展望を持っている企業なのかどうかを冷静に見極め、確かに資産形成につながるという根拠を得られないなら諦めるのが賢明な判断です。

値動きだけでなく企業が持つ価値を検討する

目の前でどのように市場価値がどのように変動しているかを、株価だけで判断してしまうのは正しい投資方法とは言えません。

あくまで投資は長期的な視野で企業に対して資金を投入し、その成長によって利益を得るものです。目先の株価の変動を追って資金を投入しているのではギャンブルと大差はなく、投機的な株式投資になってしまいます。

重要なのは企業がどんな価値を持っているかを見極め、今後も継続して事業利益を生み出していくかどうかを判断することです。そして、企業価値を長期的に高め続けられる企業を見つけ、その確度が高いところを投資先として選ぶのが正しい投資です。

最終的に値上がりするのか、値下がりするのかといった視点で考えることもできますが、それでもちょっとした株価の変化で心が揺り動かされてしまうでしょう。日々の変動が大きい株価に惑わされてしまうと売買のタイミングを見極めるのに躍起になってしまい、投機的思考が生まれてきます。

そのリスクを低減させるためにも企業を見つめることを重視し、信頼して成長し続ける企業に投資をすることが安全策なのです。

専門家からのコメント

ウェルスパス投資顧問
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉

実際に投資を決定する際には、「企業が持つ価値」だけではなく、「株式の価値」に関する分析も必要です。どんなにその企業に高い価値があったしても、株価がその企業価値以上に高い値段まで買われていると、せっかく企業が予想通りに利益をあげ、企業価値を上げていったとしても、株価は上がらない、もしくは下がってしまうという事態さえあり得ます。

株式価値のよく知られている指標としてPER(株価収益率)というものがあります。株価を一株当たり純利益で割って算出する数字で、その株価はその企業の何年分の利益かということを表し、数字が大きいほど株価は割高という判断がなされます。
ただ、成長企業は将来的な純利益の伸びが大きいのでPERの数字は高めだったり、公益企業は純利益が安定しているけれども伸びが小さいのでPERの数字は小さめだったりで、単純に数字の大小だけでは判断できず、日本経済や業界動向といったものを合わせた総合的な判断が必要です。

判断に迷った場合には専門家に相談することをお勧めします。

株式投資の目的は利益をあげること

正しい株式投資をするためには目的をもう一度考え直してみるのも肝心です。

株式投資をする目的とは

株式投資をしたいと思ったのはなぜでしょうか。余剰資金を投入して運用することにより「利益を上げて資産を増やす」という目的があったからでしょう。その原点に立ち返ってみたときに、最良の選択をする努力を続けることが株式投資をする上では最も重要です。

投資とは「利益を得る」という目的を大前提として、将来性がある投資先に資金を出すことを指します。その目算が正しければ、利益を手に入れることができます。誤っていた場合に損失を最小限にするための対応をすることも必要ですが、まずは正しい投資先を見極めるのが肝心です。

利益を見込める企業を見出せなければ、いくら投資をしても資産が増えていくことは期待できないでしょう。投機的な投資では短期的な利益を得ることにこだわりすぎて、十分な情報を集めて本当に成長する企業を見極める余裕がなくなってしまうのも問題点です。

株式投資に取り組む際には、常に落ち着いてどこに投資をするのがベストかを考え「ここに投資をすれば資金が増える」という根拠を情報に基づいて手に入れてから資金を投入するようにしましょう。

この心構えを持っていれば好き嫌いの感情に振り回される懸念もなく、株式投資の本来の目的に合った形で資産運用を続けていくことができます。

まとめ

株式投資では、間違った考え方で取り組んでしまったために大きな失敗をしているケースがあります。ここに挙げた投機的な株式投資、愛着型の株式投資の二つは、初心者がやってしまうリスクが高い代表例なので肝に銘じておきましょう。

正しい株式投資をすれば、きちんと資産を増やせる可能性が十分にあります。市場の値動きではなく、企業を十分に調べて「これからずっと価値と利益を生み出していくかどうか」を判断するのが大切です。

そして「この企業こそ価値が上がっていく」という根拠が見つかったときには、余剰資金を投入して投資を始めるのが良い方法です。その判断が難しいときには専門家に相談して助言を受けてみると、冷静に決断することができるでしょう。

この記事を監修した専門家
ウェルスパス投資顧問代表 渡邉
ウェルスパス投資顧問
複数の大手外資系証券会社で日本株式ディーリング業務に計20年以上従事。運用結果がシビアに評価される中で最大1,000億円の運用を任される。特に、成長株の分析及び投資戦略が得意。
現在は、ウェルスパス投資顧問(関東財務局長(金商)第3014号、一般社団法人日本投資顧問業協会所属)の代表 兼 銘柄分析者 兼 投資助言者として会員へアドバイスを行う。
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